双子の姉妹。 6-6
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「うわー!せんせ!観覧車!おっきぃ!」
「琴音!走るとはぐれるぞ!」
「大丈夫だよ!せんせ早くー!」
週末、琴音と二人で約束の遊園地に訪れた。
ここ最近ずっと元気のなかった琴音だが、今日は笑顔で楽しそうにしている。
とりあえずよかった。
俺達は午前中で粗方メインの乗り物を制覇した。
そして昼食をとってからはミュージアムやイベントなどを見て回った。
「お化け屋敷でいっぱい叫んだから観覧車でゆっくり休もう」
「それ、休んだことになるのか?」
「えへへー」
そうそう、さっきお化け屋敷に入ったのだが、最初は怖がる素振りを全く見せなかった琴音も、途中からはギャーギャー叫び回って俺にしがみついていた。
やはり女の子だし、可愛いな。
…いくら抱きついてきても胸の感触はなかったが。
お化け屋敷を出るまで下心を出さなかった俺、よく頑張った。
まあそれはさておき、もう薄暗くなってきたので最後に観覧車に乗ることにしたのだ。
「琴音、寒くないか?」
「うん、大丈夫」
乗車待ちの列に並びながら琴音に声をかけたが平気なようだ。
だが俺は……寒い。
まだ大丈夫だと考えて、もとい、冬服を出すのが面倒で、俺の格好は秋物で統一されていた。
まだ12月、されど12月だなおい。
若干、体を震わせながら、順番がきたので二人して観覧車に乗った。
「どんどん上がっていくね」
「ああ、もうちょっと遅い時間なら夜景が綺麗だったな」
「お母さんに家でご飯食べるって言っちゃったもんね」
「そうだなー」
そんなことを言いながら向かい合った状態で景色を楽しんでいた。
そしてやがて、俺と琴音の乗った観覧車は頂上付近に到着した。
「たっけー、下にいる人がありんこみたいだ」
「せんせ、子どもみたいなこと言っちゃって」
「うっせ」
琴音がクスクスと笑う。
「……せんせ、寒くない?」
唐突だった。
「ん?」
観覧車の中は風が無いものの、空気はやはり冷たい。
「さっきから震えてるの気付いてたんだからね」
「ばれたか。まだ大丈夫だと思ってな」
「嘘つき、冬服出すのが面倒なんでしょ」
「…琴音は何でもわかるな」
「そうだよー」
二人して笑う。
「……じゃあ」
琴音は小さな声でそう言って立ち上がると、素早く俺の隣に座った。
ふわりといい香りがする。