シンデレラストーリー-2
新快速を逃したら帰るのに時間が倍かかる。
だからシンデレラは振り返らずにガラスの靴を置いて行ったのだ。
トボトボといつもの車両の乗り場まで向かう。
だけど、私はいつもより手前の乗り場で足を止めた。
なぜならその先には、同じく乗り遅れたらしいさっきの男の人がいる。
時間切れで馬車は行ってしまったけど、振り返ったおかげで王子がいる。
やっぱりガラスの靴を残して行かなくてよかった。
次の電車が来る方を見ていると、その視線の先で目が合った。
男の人は軽く会釈をする。
「さっきは、どうも」と、私も会釈を返した。
髪を揺らす春の風は生暖かくて心地好い。
心なしか、胸の鼓動が小さく踊ってる。
早くも次の電車が来て、降りる人と入れ替えで乗り込む。
真ん中の方の席を見事ゲット。
さりげなく王子を探してみるが、みっともなくて後ろまでは振り返って見れない。
そんな私の隣に足を止める人が一人。
「あの、ココいいですか?」
さっきの王子…男の人だ。
他に空いてる席は、ギャル3人が座る4人席…メタボなサラリーマンの隣…豹柄Tシャツのおばちゃんの隣。
私はサッと鞄をどけ、笑みを見せる。
「どうぞ」
ダンスのパートナーの指名を受けたみたいな気分。
今日はタイトスカートでよかった。
時間は切れても私のドレスは変わらないし、ガラスの靴もちゃんとある。
そしたらほら、王子と馬車に乗ってる…なんていうエンディングもありえる。
そんなシンデレラストーリー。
END