操り人形!?〜序章「覚醒」〜-1
その日も熱帯夜だった。
17歳の高校生隈野和彦は、すでに午前2時を回った真夜中でもまだ寝付くことができずにいた。
その最たる原因はやはり異常なほどに暖かい気温であったが、それと同時につい先程までの彼自身の活動のせい…つまりオナニーのせいでもあった。
彼の息が乱れ、額には汗が噴き出してているのがそれをはっきりと証明していた。
しかし時計の針が午前3時を表示するかどうかという時になってついに彼は眠りに落ちようとしていた。
しかし……
───ドンドンッ!!
けたたましくドアを叩く音が聞こえたかと思うと次の瞬間には彼の父、隈野雄三が部屋に足を踏み入れてきた。
「お、親父!なんのつもりだよ…。せっかく眠れそうだったのに」
怒り心頭といった様子の和彦にまったく動じることはなく、雄三は悠然とかたりだす。
「誕生日おめでとう、和彦」
「………はぁ?!」
「ちょうど18年前のいまだったな、お前を産み落とすと同時に芙美があの世に逝ったのは。」
雄三の目はやけに真剣。だがそれゆえ和彦は更に訳がわからなくなっていく。
「まじで何しに来たんだよ親父」
「いいから黙って話を聞け!」
突然怒鳴ったかと思うと、ひるむ和彦など気にすることなく雄三はさらに話を進める。
「あれから俺達は2人きりで生きてきた。そしてついにこの日を迎えた。お前は18歳になり、力を得たのだ。見当がつくか?」
「18歳……AV解き…うぐっ!」
「AVごときなど今までも見ていただろうが!」
………ごもっとも。しかし殴るほどのことでは…。
「いいか和彦。芙美…お前の母さんの話を俺は今日まで努めて避けてきた。その理由はあいつが普通ではなかったからだ。」
「普通じゃ…ない?」
「ああ。あいつは力を持った女……俗に言う魔女だった。そしてその血は……」
「俺の……中に?」
「……うむ。意識したことはなかったろう。
あいつは、生まれながらに催眠術のような力を持っていたらしい。目を合わせ、意識を集中させるだけであいつは人を思うがままに操ることができた。それはやつの家柄に代々伝わる力だった。しかし…その血を受け継ぐものは迫害され、みな殺されていった。芙美とて例外ではない。しかし、迫害の手があいつに伸びる時には…」
「すでに俺を妊娠中だった?」
「その通りだ。俺とあいつは命懸けで逃げお前を産むことを為しえた。しかし芙美は衰弱しきっていたのだろう、お前と入れ替わるようにして死んでいった…。」
「それで俺には催眠の力ってやつが宿っていると?」
「そうだ。しかし分別のない者が力を乱用することほど恐ろしいことはないと、18歳になるその時まで力は封印されることになっていたのだ。」
「つまり」
真面目な話に疲れがピークに達した和彦は、強引に口を挟んだ。
「俺にどうしろと?」
「暑くて寝れないのはそのせいだと言いたいだけだ。」
にっと笑うと雄三に和彦は怒りを通り越してあきれてしまった。
「……それだけ?」
「……それだけ。」
あくびまじりに答える雄三。
「案外便利かもしれんぞ。それ」
「使い道ねぇだろ」
「ふふふ。そうやってひとりでオナニーに勤しむ必要もなくなるかもしれんぞ?お前にも好きな子のひとりやふたりおるだろう」
不覚にもピクリと反応してしまった。無意識にも、隣に住む幼馴染みの森田美緒の顔が浮かび上がったのだ。
「う、うっせぇ!そんな気色の悪い力なんか使えるか!」
上ずった声でまくし立てる和彦を尻目に、またも大きなあくびをしたかと思うと雄三は部屋から出ていった。ひとこと
「せいぜい楽しめ」と言い残して。
その夜、力について考え続けていた和彦だったが、気づけば力を使って美緒をしたいがままに操って犯している妄想を浮かべながら、宙に向かって幾度となく精を放出しているのだった。