想-white&black-L-7
「勝手なことをしたのは悪いと思ってる。だけど聞いてほしい。さっきの言葉、俺は本気だぜ。例え楓と敵対することになったってお前を手に入れたい」
「何で私を……? 私のためにそんなことする価値なんて何もありません。それとも楓さんに対する当て付けですか?」
「違う! 何回言えば本気にしてくれるんだよ。俺はお前が好きだと言っただろ。じゃなきゃ楓に黙って花音を匿ったりしなかった」
私は今までにない麻斗さんの迫力に何も言えなくなる。
確かに麻斗さんは私を大切にしてくれた。
好きだとも言ってくれた。
勿体無いくらい優しくもしてくれたし、色々と考えてくれた。
私はそんな麻斗さんに悪いと思いながらも本当に嬉しかったし、今でも心から感謝してしている。
だけど、私は……。
「私は楓さんの所に戻るって決めたんです……」
私の言葉に麻斗さんが辛そうに表情を歪めた。
そんな顔をするなんてずるい。
だがそうさせたのは自分だと思うと胸が痛い。
肩を掴んでいる指にぐっと力が込められ、肌に食い込んでいく。
「楓が好きなのは分かってるよ。だけど花音の想いは一生叶わないぜ。あいつは英家の跡継ぎだ。お前じゃない女と結婚することになる。そういう運命に生まれた男なんだよ」
「………っ」
そんなことは分かりすぎるほどに分かっていた。
何度も同じことを言われたし何度も繰り返し考えてきた。
それでも毎日側にいたいと望んでしまう。
あの腕が求めてくればその誘惑に抗うことなんかできない。
だがこうしていずれあの人のところにいられなくなると諭される度、千々に引きちぎられそうな心が悲鳴をあげるのだ。
そんな私に麻斗さんがたたみかけてくる。
「だけど俺は違う。俺も結城の人間だから多少干渉されるだろうけどそんなもん構うもんか。俺なら花音を必ず幸せにしてやれる。この先傷つくって分かってんのに黙って見てられっかよ」
「あ、麻斗さん……」
麻斗さんのあまりに真剣な眼差しに言葉が出ない。
以前、理人さんにも言われた事がある。
いずれ楓さんに相応しい誰かが来るから、その時私は邪魔になるのだと。
私が楓さんを好きになっても、楓さんと結ばれる事はない。
誰からも望まれない恋なのだ。