想-white&black-L-4
「マジで? 花音に言ってもらえるとすげえ嬉しい。ところで花音のドレスは楓の見立て?」
話し方はいつも通りなところがかえっておかしくもあり、微笑ましかった。
「……はい、一応。これが一番マシに見えるって」
数日前から散々何十着と試着させられた後で結局この黒のドレスに決められた。
デザイン自体はシンプルだが、まるであつらえたかのように身体に馴染み大人っぽく見せてくれる素敵な物だった。
その上からアクセサリーと靴とバックも揃えてもらい、髪は瑠海さんと瑠璃さんが綺麗にセットしてくれたのだ。
「ふうん。きっと花音のためにオーダーで用意したんだろうけど、まあ楓は素直に誉めないからなあ。でも本当に綺麗だよ、すっげえ。こん中で一番綺麗」
こんなセリフを臆せずさらりと口にしてしまう麻斗さんに私の顔は更に赤くなっていく。
「あ、……ありがとうございます。その……お世辞でも嬉しいです」
「いやいや、俺花音にはお世辞なんか言わないから。花音が綺麗ってのはホントホントの本心だよ」
そう言って麻斗さんの大きな手がポンポンと頭を撫でてくれた。
以前と変わらず優しい麻斗さんにほっとすると同時に、やはりまだ後ろめたい気持ちを感じてしまう。
「あれ、そういや楓は? 来てるんだろ? 一緒じゃなかったの?」
楓さんの名前が麻斗さんの口から出て思わずぎくりとする。
「あ……えっと、何かお知り合いの方と話が弾んでいたみたいなので」
「へえー……」
私はこの時気付かなかった。
麻斗さんが何を考えていたのかを……。
それからしばらく麻斗さんと話をしていたが、その間もひっきりなしに声をかけられ遠巻きからも視線が浴びせられていた。
何と言っても今日の主役でもあり麻斗さん自身、楓さんに劣らず華やかで人の目を惹く雰囲気がある。
こんな人と一緒にいる私は逆に肩身が狭くすら思えてしまう。
「すごいですね。こんなにたくさんの人が麻斗さんのお祝いに来てくれるなんて」
「そうでもないと思うけどなー。俺は次男だから大したことないし、兄貴とか楓なんかもっとすげえよ」
「そ、そうですか……」
これ以上すごいことになるなんて経験のない私には全く想像がつかない。
何だか今ここにいることすら夢でも見てるみたいで現実味がないくらいだ。
そんなことを考えていると突然麻斗さんがとんでもない事を言い出した。