ラブ節句ー雛ー-3
二時間後。
「出来…た…」
…うん。
飾ってみたものの…うん。何だろ、とりあえず、色んな人にごめんなさい。
「飾れないよりマシだよな」
「あ、うん。マシ、うん、マシ。…だと思う」
お雛様とお内裏様めちゃくちゃ遠いんですけど〜。
三人官女に余裕が無いんですけど〜。
五人囃子とかもはや二段なんですけど〜。
ていうか、もう七段じゃないんですけど〜。
「マイホームは広くしような」
「うん。切実に」
「二階に行けないな」
「大丈夫。全部持ってきたから」
冷静に対処してる自分が悲しいし、毎年恒例になりそうで怖い。
自分らのカスさに嫌気がさす。あ、目からしょっぱい水が…。
「あわー♪」
お?
「あっく嬉しそうだな」
あんたが笑った。
「うん」
だからアタシも笑えた。
まぁ、いいか。
明日ひな菓子いぃっぱい買ってくるから許して。
「廊下寒いね、やっぱ。戻ろっか」
「いや待て待て、あっくの初節句に一枚」
えっ、今カメラどっから取り出したの!?
「あと雰囲気作りにコレも流そう」
だからそのオルゴールどっから取り出したの!?
ちなみにこのオルゴール、扇型の木で出来てて『明来雛』って書いてあんの。
階段の一番下段にあっくを座らせて、隣にオルゴールを置いた。
いやぁ…、自分で言うのもあれだけどうちのお雛様、世界一可愛いっすわぁ。
「うちのお雛さんは世界一可愛いですな」
思考回路が一緒て…。
嬉しいような虚しいような。
「言うまでもないね」
廊下に聞き覚えのあるメロディーが響いて、思わず口ずさむ。
ああ、雛祭りなんだ。
後でケーキでも買いに行こう。