コンビニ草紙 第十五話-2
「…なんか、すごい所ですね。恐縮しちゃいます。」
「へ?そんなことないすよ。じいちゃんの知り合いのお店なんすよ。」
「そうなんですか。素敵な場所ですね。」
「りょーこさんが気に入ってくれたなら良かったす。料理も結構美味いんすよ。」
彼は微笑うと桜の前に座った。
綺麗なものは何でも絵になる。
そんな言葉が頭の中をよぎる。
彼とこの空間がぴったりと嵌るからまた魅入ってしまう。
私だけ、異世界にきてしまったみたいだ。
「今日は本当ありがとうございました。帰る所を止めてしまって…。
たまに今日みたいな事があるんす。」
「いいえ、今日は特に用事もありませんでしたから。
でも、いつもはどうしているんですか?従業員の方を雇ったりされないんですか。」
「へぇ。いつもは店を閉めて病院に行ってます。
従業員は、何回かそうゆう話が出て募集したんすけど、
じいちゃんが結局みんな断ってしまって。」
「お祖父さんは、…少し難しい方なんですか。」
「そうゆう訳でもないんすけどね。白黒はっきりしてますね。
良い悪い、好き嫌い。どっちかしか無いんで、駄目だと思ったら駄目らしいす。」
「なるほど。明快な方、ですね。」
「へぇ、良く言えばそうすね。
だから今のところじいちゃんの目に適う従業員はいないんすよ。
そんなに困ってないから居ないなら居ないで何とかなります。」
―失礼いたします。
ゆっくりと襖が開いた。
懐石料理が運ばれてくる。
どれも旬な野菜や魚を使った料理で美味しそうだ。
一品一品新鮮な食材を使っているようで、案の定、全て美味しかったので
私は全て残さず食べてしまった。
彼は黙々と、ゆっくりと丁寧に料理を食べた後、日本酒を頼んだ。
私も同じものを呑ませてもらう事にした。