恋してくれますか-4
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次の日の数学の宿題を、私はやっていかなかった。
授業中は寝たふりをして、机に突っ伏していた。
座席が窓際に位置している私は、いつもの通りやる気のないけだるい先生の声を頭の後ろに聞きながら、空にふわふわ漂う白いお団子を眺めていた。
先生は、食べ物とか何が好きなんだろ?
---自分は何をやってるんだろうな、と思う。
昨日の夜は宿題として指定されたテキストを開き、問題を解いた。
けれど、その答えを書き記さずにノートを鞄に突っ込んだ。
宿題の解説をしている先生が、私が昨夜導き出したものと同じ答えを言うのを聞いて、私は突っ伏したまま小さく頷いた。
だんだん、本当に頭がぼうっとしてきちゃったな。
---その日の放課後、数学準備室に行くと、先生がいつもと違う顔をしていた。
「畑本、今日はどうした、体調悪かったのか?」
え、と口が開いた。
…なんだか嬉しい…。
じゃなくて。
「ごめんなさい。私は元気です。」
困惑する先生に頭を下げる。
「先生は気づくかな、と思って、寝たふりしてました。」
先生は一瞬、考えるような顔になり、やがていつものように呆れ顔でため息をついて椅子に座った。
「すみません。」
「もういいよ。」
「まさか心配してくれるとは思わなくて。」
「そりゃ、心配くらいする。」
「なぜですか?」
聞き返す私を、先生はじっと見た。
「そっちは?」
「え?」
「畑本は、なんで俺を試したんだよ。」
なんで。
なん、で…?
「よく、分かりません。」
「へぇ。」
先生は流すように言って、立ち上がる。