恋してくれますか-12
「ふーん?」
……変な人。
「私、帰ります。」
「本当に高橋先生のこと、好きなんだ?」
「…か、帰ります。」
私は校門に向かって走った。
途中で転びそうになり、きっと私の動揺は伝わってしまっていると思ったけど、構わずに逃げた。
変な人。
あの人、なんか怖い。
でも一番怖いのは…自分の気持ち。
こんなとき、なぜだか先生を呼んでる。
先生、先生…。
走りながら、息を切らしながら、小さな声で先生を呼び続けた。
その度に先生の呆れたような笑顔を思い出して、泣きそうになった。
本当は分かってる。
分かってるの。
…だけど、
『先生は、先生だよ。』
そうだよ、だから…
自分の気持ちを知ってしまったら、終わりだ。
『私にも恋愛感情があれば、そばにいても良いんですか?』
この間先生に言った言葉。
付け足したくて、どうしても言えなかった---
---『たとえ、生徒じゃなかったとしても?』
そんな勇気なんて無い。
自分でも自分が分からない。
どうして上手く言えないの…?
荒い息を吐きながら立ち止まる。
つい触れてしまうのは…さっき先生がキスをした場所。
「先生…なんで?」
一つだけ分かってるのは、いつまでも熱を持つ私の心。
震える右手を、左手でぎゅっと握りしめた…。