恋してくれますか-11
『先生は、生徒のこと好きになってくれないよ。』
なんで、あんなこと?
なんで、あの言葉に傷ついているんだろう…?
私本当に、本当に先生のこと…?
「高橋先生のこと、好きなの?」
そう、その言葉が一番…
………ん?
「好きなんだ?」
背後から声がして、うつぶせのまま上体だけ少し起こして後ろを見る。
…………誰…?
黒髪をワックスで少し立てた男の子が、不機嫌そうな顔をして私を見ている。
細長い足を折り畳み、所謂ヤンキー座りのようにしゃがみこんで、片膝に肘を当てて頬杖をついている。
「ほら。」
「え?」
憮然とした表情のまま、片手を私に差し出す。
どういう意味か分からずまばたきをすると、不満気に口を曲げて、手を上下に振った。
ようやく理解した私はその手を取った。
「あ、ありがとうございます。」
「ぶっ。」
「え?」
手を引いて起こしてくれた見知らぬ男の子にお礼を言うと、彼は私を見て吹き出した。
「お前、気づいてないわけ?」
「何、ですか?」
「俺が転ばしたんだけど。」
「え…」
な、な、何?
「なぜ、ですか?」
私が尋ねると、彼は私の手をぐっと引いた。
顔がすごく近くに来て、私は目を開く。
彼は、真顔のまま私の目を見ている。
「可愛かったから。」
「は?」
そのまま、彼の顔は少しずつ近づいてくる----
………えっ
「---んん?」
「……な、んですか?」
彼の唇が私の唇に触れる直前、私は咄嗟に出した右手で彼の口を塞いだ。
恐る恐るその手を離し彼と距離を取ると、彼はニヤリと笑い、唇を舐めた。