もっとHな管理人-2
――ピンポーン!
チャイムと同時に、管理人室の小窓から覗く茶目っ気たっぷりな瞳…。
『ハイッテイイ?』
202号室…椎名ユリさんの口の形がそう言って、にこやかに笑った。
「ドーゾ!」
僕は口の動きにジェスチャーを加え、彼女を管理人室へと迎え入れる。
身長170センチを超えるモデルの彼女は、長い手足をしなやかに踊らせながら、僕に近づきその手を取った。
聞いたところによると、ユリさんのおばあさんはフランス人で、ユリさんはクオーターにあたるとか…。
おばあさん譲りの濃いヘーゼルの瞳で、ユリさんはまっすぐ僕を見つめる。
迂闊に見つめ返すと吸い込まれてしまいそうな程、その瞳は深い光彩を放つ。
背中では瞳と同色の艶やかな栗毛が、ふわふわと揺れている。
たしか年は僕と同い年の22才だったはず。
童顔の僕と比べると、ユリさんははるかに大人っぽい雰囲気だ。
『零くん…ちょっと私のお願い聞いてくれる?』
悩ましげに弾むユリさんのハスキーな声が、僕の耳に心地いい。
「お願い?それは僕に出来ることかな?」
異国の血が入っているからだろうか?
積極的なボティタッチに、物怖じしない食い入るような視線…さすがの僕も恥ずかしくて、思わず目が宙を泳いでしまう。
『たぶん…零くんになら出来る。でもこんな話して変に思わないでね…』
彼女はそう前置きして、昨晩電車内で遭遇した、衝撃的な体験を口にした。
ユリさんは昨日、渋谷でファッション雑誌の撮影があったそうだ。
夕方撮影が終わり、いつもならタクシーで帰宅するところを、駅近くのファッションビルでショッピングをした為、その足で帰宅しようと慣れない電車に乗ったとのこと。
その電車内で痴漢に遭ってしまったと言うのだ。
携帯で音楽を聞いていた為異変に気づいた時には、すでに男の手がスカートの中に入っていた。
しかも…その痴漢の巧みな指使いに、ユリさんは感じてしまったと言う。
『あのスリルと、突き上げるような熱い快感が忘れられないの…』
ユリさんは昨日の痴漢の指使いを思い出したのか、頬を火照らせ僕を熱い瞳で見上げる。
「ま…まさか…僕に痴漢になれとは言わないよね?」
僕が慌てて彼女を見ると、ユリさんの瞳に妖しげな影が揺れている。
その瞬間、僕の鼓動はドクンと弾けた!
早打ちする心臓が口から飛び出してしまうんではないかと、とっさに口元を押さえた程だ。
――でも…結局一時間後、ユリのその(魅惑的な)申し出を僕が断れる筈もなく、僕ら2人は電車内にいた。