生徒会へようこそ【MISSION'0'停学を回避せよ!】-3
ここで少し自己紹介を…。
僕は香住 優。カスミだとかユウだとか、女の子みたいな名前だと昔から言われている。
こないだ高校生になったばかりの15歳だ。
性格は自分で言うのも情けないんだけど、小心者だと思う…。積極性が足りない、自己主張が出来ないなどなど、小・中学校の成績表には書かれていた。
だから、そんな僕が生徒会の役員になるだなんて、考えてもみなかった。
自分から立候補することはまず無いだろうし、推薦されることも無いだろう。
生徒会は生徒の模範。学校の秩序を守り、先頭に立って行事などを円滑に運営する。
格好いいなぁ。
僕がその一人になるのかと思うと、緊張もするけど、今までの僕から抜け出せるんじゃないかとワクワクする。
僕は期待に胸を踊らせながら、渡邊先生に指定された場所へ急いだ。
『放課後、旧校舎の4階一番奥にある第4多目的室に行け』
昼休み、友達と弁当を食べていると先生がそう伝えに来てくれた。
ん?生徒会室じゃないのか?
そんな小さい疑問も一瞬浮かんだが、大して気にすることでもない。
とうとう4階に着いた。
確かここを曲がった一番奥がその部屋だ。
深呼吸をしながら一歩一歩、歩みを進めてゆく。
あれ?
多目的室の前で、背筋を伸ばし立っている女の子がいた。
近付くごとに輪郭がはっきりとしてくる。
白い肌。
華奢な体。
長く碧く光る黒髪はてっぺんで一本に束ねられている。
僕は彼女に見とれ、ボーっと立ち尽くしてしまった。
彼女が視線を感じて振り返る。
縦に大きい、黒髪に似た漆黒の瞳。
通った鼻筋。
少し小さめな朱い唇。
桃色の頬。
「ん?」
間違い無い。
宝 寿絵瑠だっ!!
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、絵に描いたような完璧美少女。
しかも、世界に羽ばたく『JEWELЯY TAKAЯA』の社長令嬢。
もちろん、みんなの憧れの的だ。もちろん、僕も…。
今までチラッとしか見たことなかったけど、近くで見るともっと可愛いなぁ…。
「何だ?」
声まで可愛いなぁ…。
「貴様、何か用か?」
可愛いな、貴様だって。可愛…え!?今、なんて?
き…何?
「へ?」
比べて僕は何て間抜けな声なんだ。
まさかな。
あの宝 寿絵瑠がそんなこと。
「貴様、何か用かと聞いている!」
やっぱりーっ!!
聞き間違いじゃなかった。
あの宝 寿絵瑠が…貴様って言った…!
そもそも貴様なんて言われたこと無いし、言ってる人も見たこと無い。
せいぜいゲームやマンガの世界ぐらい。
それなのに、宝 寿絵瑠に貴様って言われた…!
わ、悪く…ない…。いやいや、いかんいかん!
「あ、いや…別に、何でも」
「そうか」
宝さんはそう言って向きを変え、真っ直ぐ前を見つめた。
しかし驚いた。
てっきりもっと大人しい子だと思ってただけに、僕の動揺も半端じゃない。
僕の中の『宝 寿絵瑠』が崩れていくのを感じる。
それでも、やっぱり宝 寿絵瑠はめちゃくちゃ可愛い。
そんなことを考えていると、彼女がまたこちらを見た。