ゆらぎ村の悪霊〜後編〜-4
「小石神様の伝承の真実…まさか、小石神様の伝承そのものは江戸時代に作りあげられた伝承話にすぎなかった…そういう事ですか?」
伯方がそう言うと、尾部は静かにうなずいた。
「小石神様の正体は、玉の神様ではなく、実は当時由良木村の領主だった小島氏のことだったのです。領主である小島行宗は村人達によって3つに引き裂かれ、死んでいきました。そして、小島行宗と村人の霊を鎮めるために作られたのが、この黄泉道の社と、小石神様という訳です。」
「しかし、恨みを晴らすだけなら、小島氏のみを殺せば事は済んだでしょうに。何故、村人まで殺す必要があったのですか?」
「非情というか、悲しい話ですが、村人達の財を根こそぎ奪うためです。そして、村ごと滅ぼした阿須磨村の人々は、偽の小島氏、偽の村人を演じながら、他の村から人さらいで補充をし、あたかも由良木村が今も存在しているように見せかけていきました。」
伯方は息をのんだ。
「では、今回の異変さわぎは一体何だったのでしょう。」
「それは、いずれ止む事でしょう。とりあえず、最後の確認に行きましょう。」
「確認…?」
伯方と尾部は村の公民館へむかった。
そこには村長がいた。
「村長、是非聞きたい事があるのですが?」
「ん?なんでしょうか?」
村長はどこかへ出掛ける準備をしていた。
「村長はいつ頃この村へ来たんですか?」
村長は首をかしげた。
「はぁ、ちょうど一年前になりますかな。まぁ、元いた土地も田舎でしたので、ここは妙に馴染みやすいものでしたよ。しかし、そんな事までお調べになったのですか?」
尾部は話を続けた。
「なるほど、原因はやはりあなただったようですね。」
村長と伯方は驚いた。
「ちょっと待って下さい。村長がこの村に来て間もないというのであれば、尚更今回の件とは関係ないのでは?」
「いえ、村長の祖先は実はこの村の生き残りなんです。確か、村長の名字は武市でしたよね?」
「え、ええ。そうですが…。あの…話が少し見えないのですが…。」
尾部はこれまでの事を村長に説明した。
「まさか…。昔そんな事があっただなんて…。」
村長の手は震えていた。
「彼らは自分達の存在をあなたに気付いて欲しかったんです。しきりにあなたを呼んでいました。だから、わざわざ大袈裟なマネをしていたんです。」
「しかし、そうであったとしても、この件の解決策が見当たらないのでは…。」
伯方は言った。