ゆらぎ村の悪霊〜前編〜-4
「それでもいいが、今の若いもんは知らんと思うが、八の祠にお参りしたら、最後は由良木山のお堀口にお参りするやり方もあるんだ。」
「その…お堀口というのは…?」
「そうだな、行ってみるか?」
「はい!!」
尾部は老人の軽トラに乗って八までの祠に参拝した後、由良木山のおよそ中間まで登った。
「ここからは、歩かんといかんな。」
辺りには頂上行き以外の山道がない。草木が覆いしげる林を尾部と老人は登っていった。
「ここだ。」
そこには約2メートルくらいの深さの堀があり、雑草がそこら中に生え茂っていた。
「ううむ、また雑草が生えてきとる。お前さん、ちょっと手伝いなさい。」
尾部は老人と一緒に堀の下まで降りて、雑草を刈って回った。
一通り終わると、老人と一緒に堀を見下げる形で参拝した。
「お堀口…か。おじいさん、この参拝の仕方って、おじいさん以外に何人くらいが知っているんですか?」
「ああ、この参拝はな、隣り村の阿須磨村から由良木村にお供え物をする時に考えられた作法だから、阿須磨村の年寄りなら大体知っておると思うな。ただ、実際に参拝するのはもうワシだけになってしもうた。」
「そうですか…。では、この堀を掘ったのは…。」
「阿須磨村の人間だよ。江戸時代の初期頃だとか聞いたかな。」
「…わかりました。ありがとうございます。」
尾部は由良木山の入り口で老人と別れ、そのまま旅館へ向かった。
その日の夜7時半……
「二人とも、何か収穫はありましたか?」
伯方、尾部、そして秋津の三人は伯方の部屋に集まった。
「あなた達には理解できないと思うけど、私は霊視してここで異変を起こしている霊の正体をつきとめたわ。」
『ええっ!!』
伯方と尾部は驚いた。
「女よ。この村は悲しい死を迎えた女の霊に呪われているのよ。」
「女の霊……ですか。」
「そう…。明日、その霊が潜んでいる場所で除霊をするわ。」
「な、なるほど…。さすが秋津さん、仕事が早いですね。」
「そういう事だから、私は先に失礼するわ。あなた達もせいぜい頑張ることね。」
そう言うと秋津はさっさと部屋から出ていった。