卒業-3
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翌日、僕は告白の言葉を思いつかないまま卒業式に来ていた。
いくら考えようとしても、凛先輩との思い出がどんどん頭の中になだれ込んできて、結局だめだったのだ。
僕は在校生席のわりと前の方に座ってはいるが、ここから凛先輩の姿は見えない。
結構泣いている先輩達の姿も見える。
僕も来年は、こんな風に泣けているのだろうか。
粛々と卒業式は進み、後は卒業生が退場するのみだった。
そして司会の卒業生退場、の言葉と共に、続々と卒業生は列をなして退場し始めた。
ついキョロキョロと凛先輩の姿を探す。
「いた」
つい呟いてしまった。
凛先輩はいつものように背筋をぴしっと伸ばして、無表情で歩いていた。
やはり格好いい。
最後まで僕はそう思った。
***
卒業式が終わった後、僕は正門の前で凛先輩を待つことにした。
周囲には他にも大勢の在校生の姿があった。
皆、僕のようにお世話になった先輩にお礼を言おうと待っているんだろう。
あ、いや、僕はお礼もだけど告白するんだ。
卒業生は今頃、教室で担任の最後の話を聞いたあと、写真を撮ったりしゃべったりしているのだろう。
それからここを通る。
「あっ」
しばらくして、ぞろぞろと卒業生が出てくるのを見た途端、心臓はドクンドクンと暴れ出した。
緊張する。でも、言わなきゃ。
続々と卒業生は正門を抜けて、何十人もの在校生が集まって周りに人の輪ができている卒業生や、誰からも声をかけられずに真っ直ぐ歩いていく卒業生が見られた。