双子の姉妹。 5-2
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前回のトラブルに続いて、今回も不運なことに今日の勉強は琴音だった。
やはりどうしても顔が合わせにくい。
受験までもう間がないし、家庭教師である俺が悪い影響を与えてどうするんだ。
それに怒っていたら嫌だなぁ。
「こんばんは…」
小さな声で挨拶しながらゆっくりと玄関の扉を開けると、すぐにバタバタとこちらに向かってくる足音がする。
「あ、せんせ!ごめん、着替えるから5分待って部屋に来て!」
制服姿の琴音だった。
今日は帰りが遅かったのだろうか。
というか、琴音のやつ、いつも通りだったな…
麻琴のときとはえらい違いだ。
とりあえずリビングに入ると、麻琴がいた。
「よう」
「俊哉」
「……受験勉強はやってるか?」
「えーやってるよー」
ソファーに横になって携帯のキーを忙しなく叩いている麻琴。
麻琴が俺に黙って勉強を頑張っていることは以前知った。
でも、そろそろ志望校を聞いて対策を考えないと、取り返しのつかないことになる場合だってある。
しばらく考えた後、切り出すことにした。
「麻琴はどこ受けるんだ?」
「え、どこでもいいじゃん」
まあ予想通りの返事だ。
「よくねーよ。もう時間無いんだぞ。俺に協力させろよ」
「大丈夫よ。俊哉は琴音の勉強だけに専念すれば?」
「俺はお前の家庭教師なんだぞ。無事に大学合格まで導くのが俺の役目だ」
「…あたしは琴音と違って受験勉強は俊哉に見てもらってないじゃん」
「今までそうだからって言っても、受験だぞ?受かりたくないのか?」
「そうだけど、まだ今はあたし一人でやれるから」
まったく…麻琴は本当に頑固だ…
「じゃあ次の模試の結果、それが合格ラインに届かなかったら、観念するんだ」
本当はそれでも遅すぎる。
ただ、やはり麻琴が一人で頑張ろうとしているのを絶対に否定はしない。
「…わかったわよ」
麻琴はそう言うと、ふてくされながら寝返りをうった。
「おい麻琴」
「なに」
「パンツ見えるぞ」
「ばっかじゃないの!!」