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I am from...
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I am from...-1

静岡県東部、日本一の山と名高い富士山の麓に小さな町があるのを知っているだろうか。
恐らく知らない人がほとんどだろう。当然だ、我々には他地域にある小さな町の存在など日々の生活では知る必要はないのだから。

この小さな町は、3月23日に消滅する。正確に言えば、隣市との吸収合併により名前が消える。
私の通う中学と町内を流れる川以外、その町の名前は消えてしまうのだ。それはとても悲しいことだと思う。



私はこの町で生まれ、14年間この町で生きてきた。

町は市街地──とは言っても商店や工場が集中してあるだけだが──と住宅地、農村地と場所によって大きく異なっており、私は農村地に住んでいる。
農村地というだけあって、どこを見回しても畑と田んぼと山ばかり。一世帯ごとに山をひとつずつ所有しており、筍や山菜だけでなく、鹿や猪、蟹まで穫るときもある。
風呂はいわゆる釜風呂で、入る前にはいちいち薪をくべる必要があった。学校の友人が話すガス式の風呂が昔は羨ましくてしょうがなかった。

小さな町のため、人間のネットワークはすさまじい。例えば私が学校の友人の話をすると祖父母は、ああ、○○の家の子供か。と言い当ててしまうのだ。つまり、何か悪いことをすればすぐにばれてしまうのだ。無論、色事も。



「せっちゃん、おととい田中さんちの孫と一緒に帰ってたら?」

「は?」

夕飯のとき、しかも食卓に全員揃っていたときにそう言われ、思わず箸を止めて祖母を見る。祖母に悪意はないらしく、ただにこにこと笑っていた。

「何、せつこ、あんたまさや君と付き合ってんの?」

「せっちゃんよく話してたもんね。まさやばかうるさいとか、体育の授業でこけてたとか」

すかさず母と姉が茶々を入れてくる。父にいたっては泣きそうな顔をしていた。泣きたいのはこっちだ。

「違うって!!部活ちょうど同じくらいに終わったから一緒に帰っただけ!!」

確かに田中とは仲が良かった。けれど別に恋愛関係まではいっていない。

「大体、ばあちゃん、そんなんどこで聞いてきたのさ」

「んー、しょうちゃんが見たって。なんか難しい話してたらしいじゃんねえ」

『しょうちゃん』がどこの誰か知らないが、恐らく帰り道ですれ違ったおじいさんのことだと思った。
難しい話って何話してたの、と姉が訊いてきたが私はあえて無視した。来月には大学進学で家を出る姉には関係ないと思ったからだ。


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