I am from...-3
「…姉ちゃん、合併すんのさみしい?」
そう尋ねてみる。姉は当たり前だよ、と笑って答えた。
「しょうがないってことは分かってるけどさ。合併しなきゃ町もこれ以上運営できないからね」
「えっ?」
運営できないのは、あっちでしょ?
私の言葉に姉は怪訝な顔を見せる。それから違うと言った。
「ただでさえ小さい町なのに、人口は毎月減り続けるわ高齢化は進むわで、財政が厳しいの。で、合併すれば県からお金貰えるから合併しようって話。確かに向こうも厳しいらしいけど、それはお互い様でしょ」
「そうなの…?」
「私もあんま詳しくは知らんけどね。子供には何にも教えてくれんし、大体、町内の大人もほとんど真相は知らないでしょうね」
ただ、この町が消えてもここの人が誇りさえ持ってれば、この町はなくなんないよ。
「誇りって?」
「英語で習わなかった?『Where are you from?』って。せっちゃんは何て答える?」
Where are you from?
あなたはどこ出身ですか?
「I am from…」
名前が変わろうと、地図帳から姿を消そうと、私の出身は変わらない。
私はここで生まれて、ここで育って、ここが大好き。
それだけだ。
END