バレンタインデー-1
朝から溜め息が止まらない。
朝から?
いや、正確にはこの一週間溜め息が止まらない。
だって今日は2月14日。
バレンタイン。
クリスマスや誕生日に並ぶ恋愛三大行事の一つ。
我が恋人、記念日大好き女のつむぎが燃え上がる日だ。
『準備するからあたしがいいって言うまで帰って来ないでね』
早朝、満面の笑みでアパートから追い出された。
俺ん家なのによくそんな事が言えるよな…
そんな心の声は喉まで出かかって引っ込める。
余計な一言は言わない、それがこのめんどくさい記念日女・つむぎと上手くやっていけてるコツだ。
せっかくの日曜日なのに、寒空の下に放り出された哀れな俺。
今日ってそんな日なのか…?
違うだろ!
もっと心ときめく日の筈だ!
何かするならするで、それなら何日か前から準備しとくものだろ!
『慎吾君に勘付かれたら嫌だから、当日まとめてするの』
計画性があるんだかないんだか…
本屋で立ち読みする事一時間。
レンタルビデオ屋で新作DVDを物色する事30分。
うろうろする事…
時間が潰れん!
朝からいつになるか分からん約束の時間まで自分の家に帰れないって…、あいつ鬼か!!
あぁ、腹が減った。
そう言えば朝ご飯食べる前に追い出されたんだ。
…やっぱ、鬼だ。
とりあえず空いた小腹を満たすべく、ハンバーガー屋に入った。
チョコレートとは関係ない店内も恋人同士だらけ。
ふわふわと浮遊するハートが見えてきそう。
適当にセットを頼んで店の一番隅の席に腰を下ろした。
どうにか昼までは時間を潰せたけど、あとどれくらいかかるんだろう…
バレンタイン。
何の為の行事なんだか。
去年は2月14日の深夜0:00ピッタリにアパートに突然押しかけて来たんだよな。