旅立ち-4
翌日、僕は灼熱の太陽の下で肉を焼いていた。昨夜の酒は、先ほどまで興じていたビーチバレーですっかりと抜けていた。肉が焼けたことを告げると、テニスサークルの美女達がビールを片手に集まって来た。水着姿を見慣れた僕も、プロポーション抜群の美女の水着姿に、眩しいものを感じていた。
「ほら、味付けしてあるから、そこの箸でそのまま食べな!」
「へえ、美味しそう!勇斗くんって料理もこなすんだ?」
「まあね。でも、肉くらい誰でも焼けるだろ?」
「そんなことないよ。ずっと見ていたけど手際が良いもの。」
千里の連れてきた美女達は僕の一つ年上だった。年下の僕を子供扱いする女性達の仲で、綾乃だけは僕に興味があるようだった。
「あら、綾乃は勇斗くんがお気に入り見たいね?でも、気をつけた方が良いかも、勇斗くん意外と遊び人なんじゃない?」
「そんなことないよ。勇斗くん、そんな人じゃないよね?」
口を尖らせて否定する綾乃に、僕は返す言葉がなかった。その会話を聞きつけて直也が得意の突っ込みを入れてきた。
「そうそう勇斗は遊び人だよ。もっとも安全なのがこの直也でーす。」
「直也!あんたが一番危ないよ!」
「そうゆうけど、お姉さんたちを目の前にして、狼にならなきゃ男が廃るだろ?
な、勇斗?」
「直也。あんたは本当にもてそうにないね。その情けなさが母性本能をくすぐるわ。」
いじられキャラの直也は、初対面の美女たちに既にいじられまくっている。
渚に目をやると直也が連れてきた他の男たちと楽しそうに話しているのが見えた。何故か渚の笑顔が眩しいほどに輝いて見えた。
夕方、帰りの車の振り分けを直也が仕切っている。直也は気を効かせたつもりか、僕の車に近場で降りる何人かと、僕と帰る方向の違う綾乃を割り当てていた。僕は渚のことが少し気になったが、はりきって振り分けをしている直也に水を注すのを控えることにした。
綾乃との帰り道は楽しいものだった。綾乃は、印象的な大きな瞳を細めて、ころころとよく笑い、よく話した。ショートパンツから伸びた脚が眩しかった。
綾乃が時折自分を見つめているのが分かる。誘えばついて来ることは分かっていたが、僕はその気になれなかった。綾乃の家の近くで車を止める。降り際に、綾乃はまた会いたいと言い出した。そして、僕に唇を重ねると、携帯番号のメモを置いて立ち去った。
気がつくと渚からメールが入っていた。
一人なんだ。もし、勇斗も一人なら遊びに行ってもいいかな?
僕は、海を出る時のことを思い出していた。自分を見つめる渚を、声も掛けずに置いてきたことが、何故か気になった。僕は、一人だとメールを返すと急いで車を走らせた。