秘密〜終わり〜-1
「ごめんなさい!!」
「いいよ。気にするなって」
陸先輩と二人きりでケーキを食べたことを、私は篤也に謝った。
篤也は笑って許してくれた。
でも、その笑顔が少し寂しそうに見える…
「しっかし、マイペースな人だな、その先輩」
篤也はベッドに寄りかかりながら食後のコーヒーを飲んだ。
「ホント、ごめん…」
私は小さくなって、両手にコーヒーの入ったカップを持ち、軽くため息をついた。
私たちは篤也のバイトが終わった後、篤也の家に行き、夕御飯を食べた。
篤也の家はお父さんがいない。
篤也が小さい時に離婚したらしい。
それで、お母さんが夜の仕事をして、篤也とお兄さんの二人を育てているんだって。
お兄さんは今県外の大学に通ってて、お母さんは夜いないから、たまにこうして篤也の家でご飯を食べたりするの。
ちなみに今日のメニューは炒飯。
篤也が作る炒飯はおいしいんだ!
それで、ご飯を食べながら今日のことを話して、今に至るってわけ。
篤也がカップをテーブルに置いて、私の方に顔を向け、目を閉じた。
私もカップをテーブルに置いた。
こうやって篤也がキスをねだるのは、寂しい時や不安な時。
私は心が痛んだ。
(篤也、不安にさせてごめんね)
私はそっと触れるキスをした。
篤也はまだ目を開けない。
私はもう一度キスをした。
さっきより長いキスを。
すると、篤也が私を抱きしめた。
そして、深く熱いキスを…
こうなると篤也は止まらない。
私は篤也に身を委ねた。
恋愛経験の少ない私たちは、こういう時、こういう方法でしか、お互いの気持ちを確認しあう術を持っていなかった―─
陸先輩から、相変わらず電話がきた。
でもあれ以来、どこかに呼び出されたりすることはなかった。
そして季節は替わり、暖かい風が吹きはじめていた。
「みー先輩、ありがとうございました!!」
「かんぱ〜い!」
3月下旬のある日、我が写真部の部長、みー先輩のお疲れさま会を、学校近くの居酒屋で開いた。