青山恵理・修学旅行の夜-5
「――よく来られたね。高木先生に見つからなかった?」
櫻木くんがニコッと微笑みながらこっちに近寄って来た。
お風呂あがりのサラサラの髪と、清潔そうな真っ白のTシャツ。
――あぁ。やっぱり素敵。
こんな人はエロ本なんて読まないのよ絶対!
「………う、うん。大丈夫」
彼の爽やかな表情にドキドキしながら、私はカクカク頷いた。
「昨日女部屋行って高木に見つかった奴ら、廊下で正座して1時間説教だってさ」
別の男子が言った。
高木というのはうちの学校で一番怖がられている体育教師で、修学旅行の時は毎年必ず見張り役をやっているのだ。
「マジありえねー。お前ら見回り来たらソッコー隠れろよ」
渋川くんがミカの手首を引っ張って自分の隣に座らせた。
周りに友達がいるのに、まったく気にする様子もなく、いきなり腰に手を回して身体を密着させる。
私はぎょっとしたが、ミカ本人も周りも慣れているのか、当たり前のような顔をしている。
つい最近まで恋愛レベルが私と同じくらいだったはずのミカが、こんなことを平気でするなんて嘘みたい―――。
渋川くんみたいな彼氏が出来たらみんなあんなに変わるもんなんだろうか。
今まで男の子とつきあったことのない私にとっては、目のやり場に困るくらい刺激が強すぎる。
ましてすぐそばには憧れの櫻木くんがいるのだ。
「――青山も座りなよ」
櫻木くんが自分の横をあけて私を呼んでくれた。
「……あ、ありがとう……」
嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じながら、櫻木くんの横に腰を下ろした。
教室ではあまり見ることのない櫻木くんのくつろいだあぐら姿がとても新鮮で、すごくドキドキしてしまう。
「男って、みんなこんな雑誌読むわけ?」
ミカが、丸めていたエロ本をみんなの前に無造作にポンと放りつけた。
改めて表紙を見ると、そこには
「女教師集団レイプ」だの「女子高生凌辱」だのといった破廉恥な活字がでかでかと踊っている。
そしてその中央には、体操着姿の綺麗な女の子が、ブルマを下げて自慰に耽っている写真が載せられていた。