青山恵理・修学旅行の夜-18
先生の足音が遠ざかった頃、ようやく誰かが懐中電灯をつけ、みんながもぞと布団から顔を出した。
あれだけのことをされて誰にも気付かれなかったとは思えない――。
こらえてはいたけれど、声もかなり漏れていたのではないかと思う。
どうしよう―――。
ミカは――――?
おどおどしながらミカの表情を確かめようとした時、
「ちょっと…あたしのこと……誰か触ってたでしょ!」
ミカが顔を赤らめながら怒り始めた。
「マジ?誰だよ?んなことしたヤツ」
渋川くんがしらじらしい口調で言いながらミカの肩を引き寄せる。
「わかんないけど……代わる代わる三人くらいに触られたと思う……」
ミカは自分の身に起きたことに気をとられていて、渋川くんが私にしたことには全く気付いていないらしい。
「おいおい!俺以外のやつに触らせてんじゃねーよ」
「だって……どうしようもなかったんだもん」
「ホントに嫌なら見つかってもいいから『やめて』って叫べばいいだろ?―――それとも案外感じてたとか?」
渋川くんの言葉は明らかに私を意識している。
ちらっとその表情を伺うと、彼は意味深な笑みを浮かべたまま、射るように私を見つめていた。
「だって……最初渋川くんだと思ったんだもん……そしたら次々手が延びてきて……」
「お前らぁ。一応俺の彼女なんだから遠慮しろよな!」
口ではそう言っているものの、渋川くんからは全然本気の怒りが感じられなかった。
なんだか不自然な感じがしてならない。
ミカがみんなに触られたのは、あらかじめ全て渋川くんが仕組んだことだったのではないか――という気がした。