青山恵理・修学旅行の夜-10
私、どうしちゃったんだろう……。
ついばむような優しいキスを何度か繰り返した後、こらえきれなくなったようについに櫻木くんが私の唇をこじ開けて入ってきた。
ぬるっとした軟体動物のような感触で口の中がいっぱいになる。
そうされることを望んでいたような、それでいて怖いような、複雑な喜びがこみあげてくる。
さっきとはまるで人が変わったように激しく舌を絡めてくる櫻木くん。
いつもの櫻木くんの爽やかなイメージからは想像もつかない、すごくいやらしくて大胆なキスが私を翻弄する。
絡み合う舌の上で混ざり合う櫻木くんの唾液と私の唾液。
次第に激しさを増す舌使いに呼吸がだんだん苦しくなって、いつしか私は喘ぐような吐息を漏らしてしまっていた。
「……ん……ハァッ……ハァッ…んんっ……」
あぁ……。
櫻木くん……櫻木くんっ……。
大好き……。
痺れるような感覚に身も心も溺れそうになった時―――。
突然腰の辺りに何か違和感を感じた。
……何……?
誰か触った――?
まさか……と思った次の瞬間、今度ははっきりと、何者かの手がお尻全体を撫で回してきた。
……やだ……誰っ……?
気がつけば、私の背後にぴったりと寄り添うように、誰かが身体を密着させている。
さっきの妙なムードで変な気分になった男子が、悪ノリして質(たち)の悪いいたずらをしかけてきたに違いない。
「やめて」と大声で叫びたかったが、今声を出せば櫻木くんやみんなにものすごい迷惑がかかってしまうと思うと、それもためらわれた。
それに、櫻木くんキスされながら実は他の男子にお尻を触られていただなんて、出来れば知られたくない。
先生が部屋から出ていくまでの少しの我慢。
無視してたらすぐにやめてくれるだろう……。
そう高をくくった私は、その痴漢まがいの悪戯を、とにかくじっと耐えることにした。