鬼-2
「コウキくん、ハルマくんみっけ」
ごそごそと這い出る二人に石を差し出す。
「どちらをオニにしようかな」
言葉に合わせて交互に指を差す。
「かみさまのいうとおり」
神様は選んだ。
「ハルマくんがオ」
「バーカ!」
言葉を遮られる。
「おまえはずーっとオニなんだよ!」
ニタニタと笑っていただけのコウキ君も口を開いた。
「それ、とれないんだろ?」
「いしわたせなきゃ、そいつがずっとオニなんだぜ?」
気が付くとみんな隠れていたところから出て来て、周囲を取り囲んでいた。
「トモキがオニだ」
「あしたもね」
「オニなんてやりたくないもーん」
四方八方から笑い声が聞こえる。
蔑むような笑い。
面白いか?可笑しいか?
何がそんなに楽しいんだ?
「フフフ、いしがとれないなんてヘーン!」
ここは秘密の隠れ家。
友達の証拠。
「ともだちでしょ?どうしてこんなことするの?」
赤黒い汚い感情が体の中心で塊に成っていくのが分かった。
目の前にずいとタイガ君が歩み出た。その顔はひどく歪み、笑っているようにも泣いているようにも見えた。
「おまえ、ともだちじゃねーもん」
塊が、弾けた。
「…皆、死んじゃえ」
肩で息をしている自分に気付き、はっとした。
泣いていた。
頬を伝い滴る雫が赤い。
なぜ?いや、周りが血の海なんだ。考えなくても分かるだろう。
僕の全身、真っ赤なんだ。
未だ可哀想な『彼』は掌に石をぶら下げていた。
『彼』、いやトモキ君はペタンと座り込みガタガタと震えた。
いじめられて怖かったろうに。僕はトモキ君を助けたんだ。
いじめっ子から…汚い心の子供から…。