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短く返信した
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短く返信した-3

会いたい気持ちや自分だけに想いを向けられたいと思う気持ちと同じくらい、誰でも何かに対する思いや考えが存在していて、そもそもそれらは同じ土俵で立つはずもないことを比べてみたり、優劣をつけてみたくなったり。

でも恋をするっていうのはそんな繰り返し。

正解のない自問自答に苦しんだ挙句、一番大切なひとを責め失ってしまうのかもしれない、と。

もしかしたら、沙希はそれを知っているから『ワタシはひとりとだけに向き合える相手にまだ出逢ったことがない』のかも知れないし、自分勝手なように見えるけれど、本当は何かと何かを比べたり正解のない答えを探したくなかったのかも知れないと悦司は思った。



 一年近く前に携帯を変えたとき、何気にコミニティサイトに登録した。ほんの暇つぶしのつもりだった。ゲームや色んな書き込みを見たりして退屈な通勤時間の気休めくらいにしか思っていなかった。何かを期待なんてしていなかった。ましてバーチャルな世界での出会いなんて悦司は馬鹿らしいとさえ思っていた。

 それなのに――、と思う。

 バーチャルな世界で、見ず知らずの人たちと他愛のない会話をしてる中に、沙希のプロフィールを見つけた。

<男女で最良の関係ってどんなのかな? 皆さんはどう思われますう?>

 悦司は軽い気持ちで書き込んでみた。

<はじめまして、こんばんは。最良の関係って? やっぱり彼氏彼女の関係でしょ>

 間もなくして、サイトからメールが届いた。

<はじめまして。こんばんは。カキコありがとう。やっぱりそれが普通かな? Etsujiさんは彼女いるんですか? あ、もしかして既婚だとか……>

 悦司は舌打ちした。『彼女がいたらこんなメールする訳ないだろ』返信をせずに冷蔵庫のビールを取り出した。

プルタブを開けようとしたら再び携帯が振動した。

短く返信をした。

<どうも。シングルでカノジョなんて居ないよ>

 あの時、返信をしていなかったら沙希と出会えなかったな、と悦司は思った。(了)


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