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おに。
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おに。-1

あ―――、ダル。
頭痛い。
吐きそう。
凄まじい寒気。

完全に風邪ひいた、俺。

大した趣味のない俺のささやかな楽しみが土日の休み。
好きでもない仕事を深夜までこなすのも全部この短い休みの為。

なのにこの有様。
この仕打ち。

心配してくれるような彼女もいなけりゃ様子を見に来てくれる気の利く友人もいない。
唯一来たメールは母親から。

『あんたいつかえってくるの?』

漢字変換くらいしろや、ババア!
読み辛いったらねぇよ!!

『風邪ひいたから寝てる』

この際母親でもいい。誰かに心配されたい…

『はい』

はいだぁ!?
他に言い方はないのか!
一人暮らしの息子が体調不良訴えてんのに、何だ、その言い草は!!
ていうか、普段俺に「はい」なんて言った事ないだろ!

どうせ俺は誰にも必要とされてないんだ。
このままアパートの一室で孤独に死んでいくんだ。
そして白骨化するまで気付かれないんだ…


…それは嫌だな。

布団から這い出て、ナメクジのようにズルズルと冷蔵庫まで進んだ。
何か、薬ないか。
ゴソゴソ漁ったものの、出てきたのは胃薬ぐらい。

「…飲まないよりマシか」

基本やたら元気な俺は、風邪薬という物を不必要品と見なし常備していなかった。

どうにか立ち上がって薬を体内に流し込むと、またナメクジ状態で布団に寝転がった。

あー、口ん中がマズい。
何かサッパリしたもんが食いてぇ。
誰かりんご剥いてくれ。
熱があって食欲不信だって言ってるのにばっちり皮の付いたうさぎちゃんの形に切っちゃうようなうっかり者の天使が台所に舞い降りてこないかな。


『なぁ、俺の今のこの状態でりんごの皮なんか食えねぇよ』

綺麗にカットされた赤い耳を見てため息をついた。

『あ、そっか!ごめんね。やり直す』

彼女はへへっと笑ってりんごの入ったお皿を持って台所へ戻ろうとする。
でも俺はそれをさせない。
エプロンの裾を引っ張って、立ち止まったすきに強引に布団の中へ引きずり込んだ。

『もー、調子悪いんじゃないの?』
『こーしてたら治るから』
『そんなわけ―…、やっ、もう…っ』
『愛してるよ、*****…』


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