おに。-4
「ていうか、お前さ」
「何」
大声を出し過ぎて気持ち悪い。
それを悟られないように静かに布団に潜る。
「こんなさぁ、一人暮らしの男の家に来ていいわけ?彼氏にバレたらどうすんの」
「大丈夫よ、ちゃんと言ってあるもん」
「報告してんの!?嫌がらねえ?」
「全然。慎吾君あたしの事信用してるし、あたしはトモ君信用してるし」
「………キモ」
「キモって何!?あたし達は信頼関係で成り立って――」
「いや、お前うるさいから帰れ。俺寝る」
「えっ、そんなに調子悪かったの?」
「最初から言ってるだろ」
「ふぅん」
自分勝手ないとこ様はぷうっと頬を膨らませて帰り支度を始めた。
「あ、そうだ。これあげる」
小袋に入った落花生が俺の枕元に置かれた。
「鬼が来たら撒いてね」
手をヒラヒラ振って帰ろうとしたから、
「あ、…つむぎ!」
呼び止めるつもりなんかなかったのに、つい名前を呼んでしまった。
「何?」
何?
何もないよ。
「…ありがとな」
「お大事にね」
笑いながら、帰ってしまった。
溜め息と共に天井を仰いだ。
つむぎの馬鹿が。
こっちは熱があってもお前みたいな奴、簡単に押し倒せるし簡単に傷付けれるんだぞ。
それを"信用してる"なんて言葉一つで俺を動けなくする。
『鬼が来たら撒いてね』
「…ふっ」
馬鹿らしくて、一人で笑ってしまった。
何が鬼だよ。
鬼はお前だ。
つむぎ。
偉そうで自分勝手ないとこ様。
彼氏とラブラブで、俺の気も知らないでつまんない相談事ばかり持ってくる。
クラクラする重い頭を持ち上げて、布団から這い出た。
さっきまでつむぎがいた台所は綺麗に掃除されていて、コンロには見覚えのない小さな鍋が置いてある。