おに。-2
はい、妄想終わり。
抱き枕に力一杯絡めていた足を緩めた。
結構イイとこだったのに迂闊だった。これからは妄想相手の名前もちゃんと考えとくべきだな。
名前…、どうせなら顔とか髪型も―――――ってイカーン!!!!
何真剣にイメージ膨らませてんだよ。そんなもんに恋心抱いてどうなる、俺!!
彼女はいない。セックスはおろか、まともに女に触ってないせいか中学生より貧相な妄想しかできなくなってる。
「あぁあ…」
なんか、余計にだるくなってきた。
もう寝よ。
ギュウギュウに目を閉じてとにかく寝て治そう。
良い夢が見られますように。
良い夢が見られますように。
良い夢が見られますように――…
「ぅ―…あぁあ゛ぁ」
良い夢…、見れるかっ、このクソ気分の悪い時に!!
もう駄目だ。寝転んでるのにフラフラする。目を開けるのもしんどいし、だからって閉じっ放しも疲れる。
なんだ、これ。
死ねってか?
ぼろいアパートの万年床で妄想ばっかしてるくらいなら、いっそ死んでしまえって事か?
あー、ダメだ。意識が朦朧としてきた。
この若さで孤独死って何だよ。
誰か、薬…
点滴、注射、お粥、優しさ、お医者さん…
どうせ医者なら…、美人女医…白衣に黒いハイヒールで髪をアップにした…、できれば眼鏡もかけててほしい。
いや、こーゆう場合はやっぱりナースだ。
ミニスカートにガーターベルトを付けた巨乳で有能なエロナース。
そうだ。
病人に必要なのは医者でもなければ優しさでもない。
エロナースだ!
弱ってる人間に無条件でエロナースを派遣する市の条例とかできないかなぁ。
そしたら俺何があっても投票に行くのに…
「う…」
…声?
あ、俺の声か。
ダルいダルい言ってたけど、いつの間にか寝てたんだな。
薄く目を開けると、当然見慣れた天井が視界に飛び込んできた。
それから―…
グツグツ
シュンシュン
台所から何かが煮える音が聞こえる。
「…」
俺、一人暮らしだよな?
でも家主の俺はここにいる。
さっきの電話の様子だと、母さんではないだろうし。
誰!?
うちに来て自然に台所に立つような知り合いいねぇぞ。
体調不良の俺の為にわざわざうちまで来て飯を作ってくれるような奴…