火曜日-5
睦月の仕事が休みの火曜日に、私達は待ち合わせをし会いました。
そこは昼下がりのカフェでしたが、平日ということもあり人影はまばらでした。
少し遅れてやってきた睦月は私を見つけて近寄ると、少しかがんで私の背に両腕を回し髪にキスしてきました。
「よかった、ほんとに来てくれたんだ」
そして小さく微笑むと正面の椅子に腰を下ろしました。
「もちろん約束だもの」
私がそう言って微笑むと、睦月も満足そうにさらに大きな微笑みを返してきました。
駆け出しとはいえ美容師の睦月は、とてもおしゃれに流行の服を着こなしていました。
ふわふわのカフェオレ色の髪も柔らかな睦月のイメージにはよく似合っていて、どちらかと言えばかっこいいというより可愛い感じに見えます。
私が見たままを睦月にそう伝えると、睦月は不本意そうに口を尖らせました。
「よくお客さんにもそう言われる。でも律子さんには僕を男として見て欲しいんだ」
睦月ははっきりそう言いました。
私はそんな睦月の言葉に心打たれました。
睦月は怒ったように真っ直ぐな瞳で私を見つめます。
私も黙って頷き、睦月を見つめ返しました。
そのあと私達は軽く食事をしながら、尽きることなくおしゃべりに花を咲かせました。
年が10以上も違うというのに、私と睦月の話は驚くほど自然に、次々と広がっていきました。
それが心地よく、また楽しくもありました。
しかし当然それだけでは済みません。
私達は時間が経てば経つほど、お互いを欲するようになっていきました。
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