火曜日-4
私の襟足を撫でる睦月の手は次々に甘い痺れを生み出しました。
ついにそれに耐えきれなくなった私の口からは声が漏れ、その現実を前に私はさらに羞恥に身を震わせました。
それでも睦月はその手を止めてはくれません。
それどころか入念に敏感なそこを撫で続け、私を困らせます。
襟足から生まれたその熱は背中から腰をじわじわ温め、同時に私の中の官能までもを呼び覚ましてしまいそうです。
嫌だ、ほんとにダメ…おかしくなりそう。
「…んっ!」
私は足先をピンと仰け反らせました。
その時、ふと睦月の手が止まりました。
「はい、お疲れさまでした」
シャワーでシャンプーの泡を流した睦月はあっけないくらいほど簡単に、リクライニングを起こしていきました。
まるで何事もなかったかのようです。
そしてシャンプー終わりを見計らったように担当美容師が戻り、睦月はその場を離れました。
私は担当美容師に髪を拭いてもらいながら、睦月の背中をホッとした気持ちと、どこか物足りない気持ち半々で見送りました。
鏡の前に戻ってドライヤーされている間も、私はぼんやり放心したままでした。
そうこうしているうちにセットが終わり、私は仕上がった巻き髪を揺らしながらレジで支払いを済ませました。
店を出る時ちらりと店の中に目をやったのですが、そこに彼の姿を見つけることは出来ませんでした。
思いの外落ち込んでいる自分に、私はこう言い聞かせました。
「これでよかったのよ。10以上も年下の子が、こんなおばさん相手にするわけないじゃない」
私は気持ちを切り替える為時間を見ようと、バッグから携帯を取り出しました。
その時です。
小さな紙片が携帯の脇からぽとりと地面に落ちました。
折り畳まれた紙片を拾い上げ広げると、そこにはこう書かれていました。
あなたにもう一度会いたいです。睦月
090-****-****
私は一瞬のうちに身体中に血が巡るのを感じました。
それは間違いなく、睦月からのラブコールでした。
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