恋なんて知らない-9
『…また、来てもいいですか?』
私の手首を緩く掴んだ、先生の手。
私の後ろで、低く囁いた言葉。
---また、来い---
…あの時私が見なかった先生の顔は、どんな表情をつくっていたんだろう?
いつもの"先生"の顔?
それとも…?
職員室で私が唐突に質問したことが、ふと頭に浮かぶ。
『先生、恋したことありますか』
本当に聞きたかったのは、そんなことじゃなくて。
先生に、恋してもいいですか。
先生は恋してくれますか。
言えなかった言葉を、唇だけで呟いた。