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恋なんて知らない
【初恋 恋愛小説】

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恋なんて知らない-3

…私は、どういう位置付けなんだろう。

正直、"恋"は気になる。

でも、友達が恋してると、その相手がなんだか少し憎たらしくなる。

友達は"恋"が楽しくてしょうがなくて私に構ってくれなくなるから、つまんない。

だから、なんだか"恋"って嫌いだった。

だけど、あんな素敵な"恋"ならしてみたい。

私の、恋。
私が、恋…?

そのとき、私の胸のここらへんがチクリと痛くなった。

…あの、"恋"を捨てた苛立った声。

どうしてこんなに、思い出してしまうんだろう。


***


「高橋先生いらっしゃいますか?」

言い慣れた言葉を職員室で発する。
相変わらず、響かない声で。

「あー高橋先生はたぶん準備室じゃないかな。」

年配の先生が、小さな私の声に答えてくれた。

その先生にお辞儀をして、小走りに数学準備室に向かったが、図書室を通り過ぎたときに視界に高橋先生の姿が横切り、戻って中に入った。

先生は、図書室に備え付けてある椅子に座り、何冊かの本のページをパラパラとめくっていた。

私がいることには気がついていないらしく、退屈そうに指先をとん、とん、と動かしていた。

声をかけようかと思ったが、私は口を動かすのが苦手で、何も言わずに先生の少し近くまで歩いていった。

「…またか。」

私の方を向かずに少し呆れたようにつぶやき、先生は体ごとこちらに向き直った。

私は数学の教科書とノートを取り出して、"問6"と記してあるところを指差す。

「この問題、分かりません。」

先生が隣の椅子を軽く引いてくれたので、私は小さく頭を下げて座った。

「この問は、先週の授業で教えた公式を二つ使って、ほら、このページにも書いてあるこれとこれに当てはめる。」

「はい。」

「そうするとプラス、マイナスが揃うから答えが出る。」

「はい。」

「………。」

先生が何も言わないので顔を上げると、相変わらずやる気のない二つの綺麗な目が、私を見ていた。

「はい。」

さっきの返事が聞こえなかったのかと思い、私はもう一度無意味に返事をした。


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