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恋なんて知らない
【初恋 恋愛小説】

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恋なんて知らない-2

「?」

「わざと、か?」

「何がですか?」

「…まあ、いいよ。」

「先生、恋したことありますか?」

私のいつもながらの唐突な質問に、先生は少しうんざりした顔になる。

「聞いてみただけです。長居してすみません。」

私はそれだけ言って、職員室の扉を閉めた。

閉めた扉によっ掛かり、誰もいない、しん、とした廊下に意味なく息を吹き掛ける。


そっか、先生私の名前知ってるんだ…。


……………変、なの。


***


クラスメートの斉藤君と笠井さんが付き合っていることに気付いているのは、たぶん今のところ私だけだと思う。

放課後の二人をたまたま見た、私だけ。

別に何をしていたわけでもない、ただ二人きりの教室で話していただけなのだけど。

薄暗い教室に夕日が差し込んでいて、二人の長く伸びた影がなんだか綺麗で。

そのときのその教室だけ、この世界とは別の美しい空間みたいで、無性に"恋"に憧れた。

去年、同じクラスになったときから、私は笠井さんに憧れていた。

いつも落ち着いていて大人っぽくて、だけどどこか親しみやすくて話しやすい笠井さん。

クラスの皆が、"笠井さん、綺麗になったよね"って言ってたけれど、元々笠井さんの魅力を知っていた私は、何故か誇らしい気分になった。

だけど、斉藤君といるときの笠井さんの表情は、本当に今まで見た中で一番綺麗だった。

無愛想ではないけど割と無表情な笠井さんが、あんな顔で笑って、なんだかいつもよりも年下に見える。

笠井さんだけじゃない、斉藤君も、とっても素敵だった。

ソツがないイメージの斉藤君は、困ったように、でもたまらなく嬉しそうに笑っている。
全然かっこつけてなんかいなかった。

なんて綺麗な、素敵な二人。

これが"恋"なの?

私の周りで"恋"っていったら、まだ何も知らなくて頭の中がまるでお花畑みたいな恋に恋してる状態か、彼氏の文句か自慢を言ってばかりの人か、ごく小数…出来ちゃってどうしよう、なんて人だけ。

あんな、可愛くて綺麗で、濃密だけど純粋なものだなんて。


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