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『It's A Wonderful World』
【コメディ 恋愛小説】

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『It's A Wonderful World 4 』 -4

「そ、そう」

僕のラリっぷりに戸惑う仁美さん。
妙な間。
無理もない。
仁美さんみたいな人間社会の頂点に立つ、むしろ神域に行っていると言っても過言ではない女神が。
僕みたいなカレー粉と会話できるわけない。
いや、カレー粉なんてオコガマシイ。
どんだけナルシストなんだ僕は。
僕なんて、むしろ歯ブラシ粉だ、いやメリケン粉だ!
つうか、粉の上下関係がわかんねえ。
マジ奥深いし、粉。
それとも、僕がアホ過ぎるのか。
無理もない。
なぜなら僕の脳みそはカレー粉、歯ブラシ粉、いやメリケン……。

「ど、どうしたの?」

ふと聞かれたその声に。

「いや、歯ブラシ粉とカレー粉ってどっちが強いかなーって」

「はあ?」

仁美さんの綺麗な眉間に皺が寄ったのを見た瞬間。

「ななななんでもない! はは、ははは!」

終わった……。
桐山終了のお知らせ。
人生のエンドロールが流れて行くのを感じた。

「シュン、お前って奴は……」

隣でマサキが泣いていた。
好きな女の子の前で、消し炭のようになっていく僕。
お父さん、お母さん。
今までお世話になりました。
愚息は今旅立ちます。
僕のエンドロール。
テーマソングはさだまさしだった。





夜、自宅。
僕は真っ暗な部屋でベッドに倒れ伏していた。
強烈な自己嫌悪。
自分が嫌すぎて、『オラ、つええやつ見るとワクワクすっぞー』とかほざいて、中央線とかを相手に頭突きで挑んでしまいそうだ。
でもね。
ボク、初めて好きな女の子と会話しちゃったんです。
どんな会話かと言うと、粉の強さについて。
あああああああ。
頭を掻き毟って、ベッドの上をゴロゴロ転げまわった。
どんだけシュールなんだ。
90年代のコントか。
すごいよマサルさんか。

「死のう」

今日、何度目になるかわからない呟き。
それでも、今度こそ本気だ。
仁美さん、生まれ変わったら、一緒になろうね……。

「シュン!! それはカレシとかになってから言うセリフだ!」

突如、開かれるドア。
マサキの登場。
相変わらず人の心の声を無遠慮に読む。

「トンガリ……」

「変なあだ名をつけるな!」

仁王立ちをして、ドアの前に立つマサキ。
真っ暗な部屋に差し込んだ、廊下の明かりのせいか、その姿は神々しい。

「このままでいいのか?」

「な、なにが」

「アホのままでいいのかと聞いてるんだ!」

声を荒げるマサキ。
その声に別の声が反応する。


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