『It's A Wonderful World 4 』 -2
「……まあいい。話を戻すと、だ。お前が仁美さん見ながら何を考えていたのかなんてお見通しだ!」
急に僕を指差すマサキ。
なんだ、さっきのノリで僕の考えてることが丸分かりなのか。
昔のミニ四駆のスパイクタイヤみたいな頭してるくせに。
「うう……」
思わず喉が鳴る。
「抵抗する仁美さんを縄で縛り上げて、放置して、散々辱めた挙句、何が『縄で縛った女を眺めながら飲むワインは旨い』だ!!」
「死んでしまえ」
全力でマサキをはたいていた。
頭のトゲに当たってちょっぴり痛かった。
つうか、なんでセリフつきだ。
「……ふふ、まあそれは冗談として」
叩かれた頭をさすりながらマサキは真面目な表情をみせる。
「仁美さんとの差なんて、今更だろ」
「差?」
差ってなんだ。
「仁美さんは、あんなに頭よさそうなのに、それに比べて僕はなんてバカっぽいんだ的な」
「うっ」
確かに、似たようなことを考えていたかもしれない。
「すぐに顔に出るんだよ。お前は」
「う、うるさいな! つうか、マジで自分のクラス帰って!」
もういい。
僕はそんなに単純じゃない。
というか、考えがそんなに間単にバレるわけない。
「こないだ決めたんだろ? 仁美さんに相応しい男になるって」
確かに、僕は決意した。
マサキENDを回避するために。
「だったら、足掻けよ。ほんの少しだ。ほんの少しお前ががんばれば彼女だって……」
そう言って、マサキは仁美さんを指差す。
ゴツゴツとした無骨な指で。
それでも、僕は嘘だと思った。
世の中はそんなに甘くない。
僕みたいなのがいくらがんばったって、彼女と一緒の世界に住めるわけない。
彼女に相応しい男になる。
そう宣言した。
そうなりたかった。
それでも。
やっぱり。
「僕には……」
僕には、遠くから彼女を眺つめるだけ。
それくらいでいいのかもしれない。
たった、それだけでも、僕は十分に幸せなんだ。
ゆっくりと窓際に目線を向ける。
そこには、本のページをゆっくりとめくる、知的な彼女の姿があって――。