『It's A Wonderful World 4 』 -16
「お、僕たちだって、お前の役に立つと思って、レイ兄さんを連れてきたんだ!」
気色ばんでアキヒロが反論する。
「ほほう。じゃあ、今僕が悩んでいるこの複素数の問題を解いてもらおうか」
「いや、算数はまだフクソスウまで学習できてねえだす」
「帰れ!!!」
算数て。
「わかったよ」
ゆらりと蹴飛ばされたマサキが立ち上がる。
「お前の役に立てれば、ここにいていいんだな」
僕を睨みつけるような視線を向けるマサキ。
「まあ、そうだな」
「お前の役に立てれば、お前と同じ空間にいて、お前と同じ空気を吸って、お前の体温を感じられるんだな!?」
「体温とかキモいこと言うな! そして、寄ってくるな」
ずかずかと距離を縮めてくるマサキを押しのけて、僕はマサキに消しゴムを投げる。
「くっ! 必ず、お前の役に立ってやるからなーー!」
そう言いながら走り去るマサキ。
良かった。やっと帰ってくれた。
つうか、アイツが何を考えているのかわからない。
つうか、キモい。
「仕方ねえだす」
ぼそりと呟くベンゾウ。
「マサキ君帰っちゃったから、二人で鉄拳でもやるだす」
「帰らねえのかよ!」
あくまで居座るベンゾウとアキヒロを無視して、僕は再び机に向かう。
アホ共め。
お前らなんか無視して、テストでいい点とってやる。
そして仁美さんに……。
「うおおおお! 燃えてきたぜえええ!!」
僕は変なテンションで数学の問題を解きまくった。
そして。
その日から、僕の猛烈な勉強が始まった。
朝は5時に起きて、勉強。
昼休みは食事も摂らずに勉強。
家に帰ってきてからも、夜中の2時まで勉強。
勉強。勉強。勉強。
猛烈な勢いで、様々な問題を解いていく。
僕の使っている教科書が、ワークが、みるみる擦り切れていく。
僕は今、燃えている!
何度もマサキの妨害にあった。
「シュン! いいこと思いついたぜ! こうやってこうしてこうすればいいのさ!」
てきぱきと、僕の手足にオモリを巻きつけていくマサキ。
「ほい。これで完成!」
そして、釣りなんかでつかうナマリをぐるぐる巻きつけた鉛筆をわたされ
た。
「何の特訓か!!!!」
却下。
ナマリ鉛筆をマサキの額に突き刺した。