『It's A Wonderful World 4 』 -14
「心配ない、だす……。げほげほ」
場の空気が。
「え、だって、アレ?」
僕が悪者だと言っている。
「だって、こいつベンゾウの分際で……」
「シュン!」
突然の大声。
駆け寄ってきたマサキに、腕の皮をつねられる。
ああ、なんてみみっちい攻撃。
「お前のために、来てくださったんだぞ! 老師は」
「いや、だってどうみてもザコキャラだし」
「なんてこと言うんだ! 8年もの間、クンフーを積んだ老師に対して!」
「ただ浪人してただけなんじゃ……」
「シュン、お前言っていいことと悪いことが!」
手を振り上げるマサキ。
思わず身構える僕。
「待つだす」
その時、ベンゾウの声が聞こえた。
「マサキ君。わたすのことはいいだす」
「老師……」
なんだ。
なんでベンゾウが大人物みたいな扱いになってるんだ。
つうか、マサキとベンゾウはいつ知り合ったんだ。
「若いうちは、みんなそうだす。シュン君を見てると、かつての自分を思い出すだす」
「僕をお前みたいなダメニートと一緒にすんな!」
「シュン!」
僕をたしなめるマサキ。
そんな、マサキを制して、ベンゾウは一冊のノートを取り出す。
「これを見るだす」
「な、なんだこの古ぼけたノートは」
ノートにはかすれた文字で伊集院レイと書いてある。
中を開くと、びっしりと文字で埋まっていた。
「それは、わたすの集大成だす。8年の全ての苦労が詰まってるだす」
「老師、そんな大切なものを……」
震えた声をあげるマサキを尻目に、僕はノートに書いてあることに目を通す。
山脈。
学級文庫。
竜巻。
竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻竜巻。
「漢字練習帳じゃねえか!!!」
思い切りノートを破り捨てた。
「そ、そんな。わたすの努力の結晶を」
「シュン、お前!!!」
「8年間何やってたんだ、オマエ!!」
くそ。
人の貴重な時間を使ってくだらないコントをしやがって。
ああ、もう。