ENDS-6
SIDE:Yusuke
姫代は今までで一番嬉しそうに手を振って、キッチンに消えていった。
その顔が出来なかったのは心の隅にオレの存在が引っかかっていたからだと思うと、とても申し訳ない気持ちになった。
兎にも角にも、これからはあの笑顔が見れる訳だし良しとするか。
とりあえず、やたら気の強そうな朝希ちゃんとやたら気の弱そうなタマくんとの会話を楽しみますか。
「いやーいやいや、何やかんやでオレは嬉しいよ、キミたち!」
正直、姫代にだけ分かってもらえれば良いと思っていた。今日だってやるだけ無駄だと思った。
でも、こうやって改めてオレを認めてもらえるのはやっぱり嬉しい。
「俺もっすよー♪」
タマくんが鼻水を垂らしながら、惜しみない笑顔を送ってくる。しかし、隣の朝希ちゃんが何やら浮かない顔だ。
どうしたんだろう。
さっきまでの笑顔はどこへ?
「朝希?どした?」
タマくんが覗き込む。
「やっぱ、言うわ」
そう言ってオレを見据える彼女の瞳は、何かを決意したような強い光を帯びていた。
「私、あんたの存在は信じるよ。そこにいるのも認める。でも、姫代から離れて」
「はい?」
オレは思わず聞き返してしまった。
矛盾、してるんじゃねぇの…?
「朝希?何で?」
タマくんも困惑した顔をしている。
「あんた、幽霊じゃん。死んでんじゃん。姫代は生きてんだよ。
あんたのことは認めてる。でも、あんたと姫代は違う」
「えっと…それで何でオレは姫代から離れなきゃいけないの」
「あんたじゃ姫代を幸せに出来ない、絶対に」
「何でそう言い切れんだよ、やってみなきゃ」
それ以上の言葉をオレは言えなかった。
朝希ちゃんの目は真っ赤になって潤んでいた。口を真一文字に結んで、大きく呼吸して…。
「やってみなきゃ分かんないはダメなの。
あんた幽霊でしょ?一生そのままなんでしょ?
あの子がおばちゃんになってあんたはそのままで、街とか歩けないでしょ?」
「そんなのオレは気にしない」
「あんたじゃない、姫代が辛い思いすんだよ…!
それにあんたが消えない保証はどこにも無いじゃん。いなくなっちゃって一番悲しいのは姫代なんだよ?」
朝希ちゃんに言われていやでも思い出してしまった。
オレは逝かなきゃならない。