ENDS-4
「サインして、サイン!」
「ねぇ姫代、目ぇ覚ましなよ」
「え?え?」
「バージョン1とバージョン2、どっちがいい?」
「どっちも!」
何で有介は、タマさんのシャツに自分の名前書いてるんでしょう。
「やめときな、私、失敗した人知ってるから。ね」
「朝希、あのね本当なの」
「姫代、みんなそうやって言うんだって。この人紹介しとくから困ったら電話してみな」
そして、何で私は誰のものか分からないケータイ番号の書かれたメモを握らされているんでしょう。
「あぅ…違うの、本当は少しずつ有介を知ってもらって」
もう、てんやわんやで訳が分かりません。
「それじゃあ私、帰るわ、うん」
急にバッグを持って立ち上がる朝希。
なんとしても阻止せねばなりません!
私は朝希の足にすがりつきました。
「放して姫代!面倒臭くなってきたから帰んの、私!」
「よっしゃ、でぇきた!」
「もう今生に悔いはなし…!」
涙を浮かべるタマさんはともかく、朝希には一から説明しなくては!
「待って、朝希!ちゃんと…ちゃんと私の話聞いてぇっ!」
「と、いう訳でして…有介は幽霊で一緒に住んでる訳なんだけど」
まさか、有介との馴れ初めを説明するのに二時間も掛かるとは思いませんでした。
「ふーん」
それでも朝希の仏頂面は治りません。
「あんたは気付いたら姫代の部屋にいて姫代に惚れたと。ほんであの世に行かないんだと。
姫代は別にどうも思ってなくて、でも生きていた頃の記憶がないこの人を放ってはおけなくて、ズッルズル3ヶ月も経ってしまったと。
そういう訳?」
朝希が簡潔にまとめてくれました。
いろいろすっ飛ばしてる気はしますが、要点はそれで間違いないので私は頷きます。
「でも、いきなり幽霊って言われてもね。見た目普通で触れるし、そもそも幽霊なんて存在しないもんだと思ってるからね」
やっぱり…。朝希の言うことは最もです。
むしろ、無条件で幽霊の存在を信じたタマさんが逆にすごいとさえ思います。