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『私の咎』
【熟女/人妻 官能小説】

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『私の咎』-3

「ありがとうございます。それではお調べしますね」

 あまりしない作業のせいでちょっと手間取ってしまった私だけど、目の前の彼は呆然とした様子でこっちをみてる。
 大切な用なんだろうけど、でもそんなに見られると恥ずかしいし、やりにくい。できれば向こうを向いていてほしいのに。

「はい、わかりました、えと090−…………です。メモいたしますね」
「あ、ありがとうございます。けど、電話が……」
「あ、そうですね」

 抜けたところのある人みたい。

 私もだけど。

「よろしかったら、お貸ししますか?」
「いや、悪いです。ここら辺に公衆電話は……」

 そんなものがあったら商売上がったり。

「一キロ先のタバコ屋にならあるかもしれませんが……」
「そうですか」
「どうぞ、お遣いください」

 しょぼくれている彼を見ていると、なぜだかとても可愛そうになり、番号をかけてから手渡す。

「あ、まずいですよ」
「お客様の大切な電話なのでしょう? それに今の状況を説明しないと先方様も困ると思います」

 確かにまずい。だって後ろでお局様がにらんでるんですもの。

「すいません」

 お客さんは私の携帯を借りると、いったん店を出てしきりに謝っていた。

「早川さん。ちょっといいかしら?」
「はい、主任」

 そしてこっちでも多分、平謝りをしないといけないんだろうな……。



「ありがとうございました。なんとか都合をつけることができました。ただ、連絡先がないと困りますんで、買って帰りたいんですが」
「はい、それでしたら……」

 ここから先はカタログを出してプランの説明。
 公私混同みたいだし、通話料の安いものを薦めておけばいい。

「プランですか、そういう計算、あんまり得意じゃないんですよ」
「そうですか、お客様のライフスタイルからしますと……」

 どうせ今日はお客さんもいないし、事細かに説明してあげてもいい。
 お局さんの機嫌が直るまではね。



「これで以上です」
「え? お金は?」
「月々のお支払いに上乗せされます。利息はつきませんので、ご安心ください」

 もちろん、これは数字のトリックでしかない。
 月ごとに買い換えられたら携帯ショップが儲かるだけで工場が破綻する。
 惰性でしよう料金を支払ってもらうことが一番みたいなのよね。

「えっと、もう電話できるんですか?」
「はい」
「電話しても良いですか?」
「いいですよ」
「そうですか、それじゃあ」
「?」

 妙に嬉しそうな彼に形式ばったお辞儀をしてさようなら。


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