『私の咎』-24
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「あぁん! お願いです、もうこんなことぉ……、あっあっあっ、いぃ、いぃのぉ……」
「奈津美ママ、嫌がりながらもすっごい感じてるね、僕の咥えて離したがらないじゃない」
丸いベッドの上で四つんばいになる奈津美と、それに後ろからしがみつき腰を突き立てる博。
断るつもりで話を切り出しても例のレコーダーには一回前の記録が残っている。
そもそも削除しているかも疑問だというのに、なぜ求めに応じてしまうのか?
奈津美自身、うすうす気付いているが、思考をそこには向かわせないことにしている。
もし、自分すら偽ることが出来なくなれば?
「いぃいいい! いく、いく、いく、いくぅううううう!」
博の腰の動きが早くなったところで、女のほうが堕ちた。
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「お願いします、もうこれっきりにしてください……」
「奈津美さん、強情だね……」
寄り添って寝そべる二人は、布団を纏うものの全裸。男は腕で女に枕をしてあげており、女は視線を逸らしつつもそれを拒んではいなかった。
「だって、私には主人も子供も……」
「そう……、考えておくよ……」
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「来週からしばらく出張で名古屋なんだ……」
「え?」
食事の後片付けをしている奈津美の背に、秀明のため息交じりの声が聞こえた。
ガチャン……。
後を振り向いたとき泡で手が滑り、皿が落ちて割れる。
「あ、いけない…………イタッ……」
奈津美は濡れた手でそれをかき集めるが、破片で人差し指を切る。
赤い筋が通ると水滴に誘われ、ぽたぽたと床に落ちた。
「大丈夫? あーあ、血がでちゃって……」
秀明は奈津美の手を取るとちゅっと口付けし、絆創膏を巻いてくれた。
「あ、ありがと……」
「あれ? 指輪は?」
「あ、うん。パートのときにしてると傷つきそうで外してるの……」
「そう……。っていうか、奈津美さん、熱ない?」
「だ、大丈夫よ……」
英明はそれを無視して奈津美のおでこに手を当てると、自分のおでこと熱を比べて
いた。
「なんか目も赤いし、風邪?」
「んーん、ちょっとたまねぎ切っててね……、だからなんでもないの」
「そう? でも奈津美、最近疲れてそうでさ……、仕事大変なんじゃないの?」
「うん。けど、貴方はもっと忙しいし、大変でしょ?」
食器を片付けるフリをして英明から逃れる。