『私の咎』-13
*
「はぁはぁ……、私は、前から奈津美さんのことが……」
「いやぁ、はなしてぇ……、こんなこと……、やめてください……」
狭い車内で絡み合う男女。
シートベルトに上半身を抑えられた格好の奈津美は両足をばたつかせ、なんとか博を押し返そうと腕を振るうが、手首を捕まれてしまえば、それもできない。
しかし、博は……、
「胸、大きいですね……、子供生むと大きくなるんですか?」
顔だけあれば十分に奈津美を辱められる。
博はニットのセーターに包まれた彼女の胸に顔をうずめ、深いため息をつく。
「はぁ……、汗の臭い……しますね」
「当たり前でしょ、さっきまで働いてたんだから……、ね、店長、ふざけないで……」
「ふざけてなんかいませんよ……」
「だって、だって、私はもう三十よ。おばさんなんだから……そんなことされても……」
「奈津美さん、ウソはいけない……」
「ウソなんか……」
ついている。
気持ちにはない。
が、
身体にウソをついている。
*
夫が恋しい。
人肌が恋しい。
社会に戻ったら、今度は女としての満足が欲しくなった。
もちろん、不倫をしたいわけではない。
あくまでも、愛する夫ともう一度幸せな瞬間を分かち合いたいだけ。
――この前は、途中までだっけ……。
酔っ払った夫のそれはうまく機能してくれず、少しのむず痒い幸せと物足りなさを置いて去っていった。
それでも良かった。
夫が幸せになれたのであれば、まだ自分には女としての魅力があると無理に納得できるから。
けれど、
「あむ、はむ……はちゅ……、じゅるじゅる……ちゅうぅ……、ちゅ、ちゅぅ……ぺろ……」
身動きが出来ないことを理由に、今の奈津美は博にされるがままだった。
制服に合わせた黒の綿パンを脱がすなんて造作もない。その奥にあるショーツは一日の汗を吸ってそれなりの臭いになっているはず。
にも関わらず、彼は遠慮なく脱がし、そしてキスをしてきた。
夫以外の男にされるのは初めてのこと。
断じて許されない行為なのだが、先ほどがぶ飲みしたワインが今更回ってきたのだということにして、抵抗もおざなりにしていた。
「いや、そんなところなめちゃ……汚いです……」
胸元をまさぐられるたびに身体がざわざわとさざめく。
乳首をニット越しに触れると、するんと滑り、ぴりっとした快感を伴う痛みに「ふぅん」と子供じみた悲鳴を上げてしまう。