同窓会-1
『おう柏木っ!…って、お前も結婚して名前変わってるよな!』
うしろからポンッと肩を叩かれ、振り向いたそこには、10年ぶりの懐かしい顔があった。
「あ…藤木」
『おうっ、俺のこと覚えてたか!』
藤木はあたしの隣りの席に移りながら、そう言って笑った。
「当たり前だよ…」
『そう?そんで俺は、お前をなんて呼べばいいわけ?』
藤木が慣れた手つきで、あたしのグラスにビールを注ぎ入れる。
そしてそのまま自分のグラスにも注いだ。
「いいよ…柏木で」
『は?だってお前結婚してるって聞いたけど…』
藤木の顔が一瞬、気まずそうに曇る。
『まいっか…とりあえず再会を祝して乾杯!』
「うん乾杯!」
…カチンッ
クイッとおいしそうにビールをあおる藤木。
下戸のあたしは、ほんの一口、グラスに口を付ける真似をする。
あたしが藤木の空のグラスにビールを注ごうと、ビール瓶を持つと、藤木がそれをやんわりと取り上げた。
『いいよお前はそんなことしなくて。それよか、酒じゃないもの頼んでやるよ…烏龍茶でいいか?』
「うん…ありがと」
頷くあたしの手元に、早々と烏龍茶が届けられた。