同窓会-7
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「藤木はまだ独身を謳歌してるんだ?」
藤木に本音を曝け出したあたしは、久しぶりに心の平穏を取り戻していた。
そんなあたしは、藤木ととりとめもない会話を楽しんでいる。
『まぁ…結果的にはな』
ふとまつげを伏せた藤木の横顔に陰が射した。
「今まで結婚考えたことないの?」
『あるよ』
即答だった。
だよね…藤木くらいの男なら、まわりの女の子だってほっとかないだろうし…
「それならなんで結婚しないの?」
自分で聞いておきながら、ちょっと嫌な気分になった。
『なんでだろうな…』
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高校時代のあたしは、年上男性への憧れが強くて、藤木のことは、仲のよい同級生としか見ていなかった。
だけど大事なのは、車を持っていることや、おしゃれなお店を知っていることじゃなかったんだよね。
お互いの弱さやわがままを受け入れ、認め合って…
そうやって少しずつ成長しあえるような関係を、この先築けたら素敵だと思う。
『柏木?また会えるか?』
吹き出しそうな程真面目な顔で、藤木があたしを見た。
でもそんな藤木の真剣さが、今は素直に嬉しい。
「すぐには無理だけど…色んなことが片付いたら、藤木に会いたくなるかも」
素直になるってこんなに楽なんだね。
それに何だか優しい気持ちになってる気がする。
『待つよ。俺柏木を…っていうか、俺ずっと待ってたのかもお前のこと』
藤木は照れて笑った。
10年という時間を超えた、こんなのんびりとしたやりとりが心地よかった。
今のあたしには、自分を見つめ直す時間が必要なんだと思う。
今すぐに何かを変えることは出来なくても、藤木が待っていてくれるなら、ゆっくりと私らしい答えを見つけていけばいい。
藤木の前で自然に微笑む今のあたしみたいに、飾らない自分で過ごしていこう。
時にはわがままで素直じゃないあたしが顔を出すとしても、懲りずに見守っていてくれる藤木がいれば、またいつか心から笑える日がくるだろう。
優しくあたしの頬を包んだ藤木の手が、とても温かかった。
――そっと目を閉じたあたしに、小さなキスが降ってきた。