白雪＝舞姫？-1
1 どうも、憲です。
現在、我が舞阪高校は全校くまなく大盛況で大忙しです。
『白雪＝舞姫？』
舞阪高校の学園祭は一日目が文化祭、二日目が体育祭と言う、ある意味強行軍なスケジュールをこなす。
一週間前から授業は午前で終了し、午後からは準備に追われていた。
ちなみに我がクラスである２年６組は文化祭では合唱をすることになっている。
模擬店は衛生上の問題とやらで三年生だけにしか許されていない。
反対に二年生は合唱が義務付けられている。
俺から言わせれば、１７歳と１８歳の違いは生まれた年と勉強によって詰め込まれた知識だけ。衛生管理に関しては変わらないはずだ。なのに、合唱とは……。
まぁ、文句を言っても始まらない。
俺はその合唱の責任者となってしまい(推薦多数決による結果)、この一週間は大変だった。曲決めに始まり、伴奏者や指揮者決め、練習の監督……あぁ、疲れた。
一方、白雪は体育祭の実行委員となり、ここ暫く準備に追われていた。
生来の負けず嫌いである白雪は『死ぬ気で勝ちに行く』と息込んで、練習にも熱が入ってた。クラスの連中も当初のイメージが払拭されたらしく、白雪に協力的だ。
いい傾向だと思う。
白雪は確かに男言葉使うし、妙な所が世間知らずだったりする。
けど、それが白雪の全てじゃない。普通の女の子らしい所だって、たくさんある。本人はそうは思ってないみたいだが、白雪は十分可愛い女の子だ。
周りも、段々その事に気付き始めたという事である。
ちなみに、舞阪高校学園祭は文化祭、体育祭の両方の結果を得点に換算して、学園祭最優秀クラスを決める。文化祭の合唱だけ成功しても、体育祭だけ頑張っても最優秀クラスにはなれないのだ。
文化祭では合唱以外に文化祭実行委員が企画したイベントが多数あり、各クラスから代表一名を選出して競う。
もちろん、このイベントの結果も得点に換算される。つまり、最優秀クラスを狙うクラスにとって、文化祭は気が抜けない時が多いのだ。
最優秀クラスになったとしても、得るのは『名誉』のみだが、毎年、激的な模擬店の商売合戦(通称・学園祭戦争)や、イベントでの死闘が繰り広げられ、地元ではちょっとした名物にもなっている。
「憲、どこ行こうか？」
廊下を歩く俺の横には白雪がいる。
午前中のトップバッターになった我がクラスの合唱も滞りなく終わり、あとの時間は自由に過ごせるからと、いろんな所を回っていた。
「そうだな…………」
「ん…どうしたんだ？」
不意に後ろを向いた俺に白雪が首を傾げる。
「なんでもない」
本当はなんでもなくない。俺が見ていた先には他校の男子……視線が煩いのだ。
もちろん、視線の先にいるのは白雪だ。
言うまでもなく、白雪の容姿は男の目を惹く。
昔は、この辺り一帯に轟いた、超絶男嫌いのハザード美少女としての噂によって、男たちは寧ろ見ようとしなかった。まぁ、視線が合っただけで殺されるなんて、おかしな噂も流れていたらしいから無理も無いが(もちろん事実無根)。
ところがだ、ここ最近の白雪の人気は急上昇の一途を辿っているらしい……。
理由は、俺と付き合い始めた事によるらしいから、たまったもんじゃない。
他校に行った、中学の友人曰く、『お前と付き合い始めた事で、男嫌いの印象が薄れたから』だそうだ。
正直、由々しき事態だ。
この現象は、今まではいなかった『白雪狙い』の男が急増している事を意味する。
俺は、なんの取り柄もないごく普通の存在だ。俺よりも、何もかも優れた男なんて沢山いるもんだ。
夏祭りの時に、白雪は『憲がいないと駄目だ』なんて、物凄く嬉しい事を言ってくれたが、不安なものは不安である。
白雪が、俺なんかよりも全てにおいて優れた男の所に行ってしまわないかと………。
こんなこと、白雪に言ったら怒られるな。
そんなネガティブな事を頭の隅っこで考えながら、俺は白雪と色々な所を回った。
三年生のやっている模擬店はほとんど行ったし、一年生がやっているレクレーションの模擬店にも足を運んだ。
楽しい一時だった。
けど、やはり頭の中の不安は拭いされない。寧ろ、ちょっとばかり強まった。
何処に行っても、白雪はやはり男の目を惹くのだ。他にも女子はいるってのに……。
しかも、白雪は男の視線に全く気付いていないのだ。どうも自分の可愛さに自覚をもっていない。
それがまた、不安だ。そして、その不安を更に増幅させるイベントがあるのだから、正直俺は気が気じゃない。
「あっ、時間だ」
「時間？」
校舎の壁に張り付けられている時計を見た白雪が、不意にそう言った。一瞬、事が把握出来なかったが、次の瞬間に流れた放送で理解した。
『「舞姫コンテスト」に出場する各クラスの女生徒は、所定の場所に集まってください。くり返します……』
「……あぁ、これか」
「そうなんだよ」
「でも、やっぱ意外だな。こういうの、嫌いだろ？」
「当然だ！憲以外の男に、しかも大人数に水着姿見られるなんて、正直ジンマシンものだぞ」
やはりこういうイベントの客の大多数は男なのは当然の事だ。