想-white&black-K-5
不快そうに眉をしかめるかもしれない。
冷たく鼻でせせら笑うかもしれない。
もしかすると何の感情も湧かず、いつものような冷めた瞳を向けてくるのかもしれない。
どれにしてもあなたが嬉しそうな顔をする場面は思い浮かばない。
待っているのはいずれ別々の未来へと続く道のみ。
分かっている、理人さんに言われなくても分かっている……。
私がいくら想っても未来は、ない。
そもそも死んでもおかしくなかった私に未来なんてあるのだろうか。
口を開きかけてはみたが、結局そのまま続けることはできなかった。
「ああっ、あ、いやっ、深、すぎ……っ」
何も言えなかった私の奥を楓さんが抉る。
肌を触れ合わせたままぐっ、ぐっと一番深い場所を何度も突き上げられ、今までとはまた異なる刺激が全身に走り抜けた。
「なぜ何も答えないっ。そんなに俺には言えないことか?」
手が伸ばされ自らが破いた襟を掴んだかと思うと、上半身を揺さぶられた。
言葉と身体で責め立てる楓さんは苛立ちを隠せないのか珍しく語気も荒い。
そんな風にされても言えるはずのない言葉を胸の奥にしまい込みながら、与えられる快楽に溺れそうになっていく。
「あくまでも言わない気か……」
闇色の瞳が一瞬伏せられたがすぐこちらに目を向けたかと思うと、その双眸の奥には鈍い光が宿っていた。
「お前は俺のだ。逃げるなんて許さない」
そう呟いて楓さんは繋がったまま小さな私の身体を壊れそうなほど強い力で抱き締める。
その言葉が嬉しくもあり、悲しくもある。
相反する想い。
自由を奪われ人生を変えた彼が憎い、だが惹かれるのを止められない。
側にいたいと願うのに、これ以上側にいることで深みに嵌ることへの恐怖。
自覚した恋は止める術を持たずただ堕ちていく。
「もう一度誓え。俺と交わした契約を忘れるな」
首筋にかかる熱い吐息が切ない。
頬に触れる漆黒の髪がくすぐったかったけれどそれすらに胸を騒がせる。
合わさった肌の熱が愛おしい。
こんな抱かれ方をして、こんなに苦しくなるのに好きで好きでたまらなくて。
「楓さ……、あ、ああっ」
腰を引き寄せ埋まった楔は飽くことなく溢れる蜜を掻き回し、私の頭の中は真っ白で何も考えられない
身を引き裂かれそうな心の痛みと快楽に打ち震える身体を伴う涙をこぼしながら、絶頂へと導かれていく。