想-white&black-K-3
欲しい、という衝動が次第に高められ、抗うことを嘲笑うかのように身体が疼き始めていく。
触れてほしくて、キスをしてほしくて、めちゃくちゃに抱き締めてほしくて。
先ほど触れられた指先すら恋しく思ってしまうぐらいに。
しかもこの身体は知っているのだ。
彼に抱かれると、何も考えられなくなるほどの快楽を与えられることを。
嫌だと口では言っていても、身体が切ないほど求めてしまうことを。
身も蓋もなくあの腕の中で乱れてしまうのに、薬なんかを使われたらどうなってしまうのか分からない。
そんな自分を知りたくなんかない。怖い。
「楓さん、やめて……。お願い」
これ以上私を変えないで。
だがその本音ともつかない願いはいとも容易く唇で塞がれてしまった。
「んん……っ、んう」
唇が触れた瞬間から互いの唾液が混ざり合う音がいやに耳に響く。
一瞬楓さんの柔らかく滑らかな唇の感触が何だか懐かしく思えて胸が痛んだが、そんな感傷を吹き消してしまうほどの激しい口づけを仕掛けられ翻弄されそうになってしまう。
唇を好き勝手に貪りながら楓さんの身体が私に覆い被さってきた。
いつもならつい身体を押し返すようにするのに、自由を奪われた腕に力は入らない。
いつも以上に深いキスは、熱く焼けるようで官能的だった。
「ふ、は……っ」
長い長い口づけからようやく解放されると、その激しさを物語るように二人の間を濡れた糸が細く光っていた。
間近に楓さんの顔があったが目を合わせる勇気もなく目を逸らすと、力仕事を知らない綺麗な指が顎を掴んで無理やり視線を合わせてくる。
「不味い」
「え?」
顔をしかめながらそう冷ややかに言い捨てた。
「他の男の味がする。お前から香る匂いも不愉快だ」
その言葉にかっと頬が熱くなる。
それが暗に麻斗さんとのできごとを示しているのだと分かった。
途中までとはいえ、麻斗さんには服の中身を知られた。
さっきまで密着していたせいか、麻斗さんがいつも身にまとっている香水が染み付いてしまったのかもしれない。
「お前のいいところは身体に余計な匂いがないとこだった。だからこうしてすぐ他の男の匂いがつくんだろう。全くいい気はしないが仕方ない」
「え?」
そう言うと楓さんは私へと手を伸ばし身に着けていた服を力任せに引きちぎり、裂かれた服の合間からのぞく下着を見て軽く舌を打った音が聞こえてきた。