「prelude」-9
「で?どした?」
「あ、えっと…」
「また分からないとこあった?」
「あ…ぁの……」
「?」
「はい、どうぞ。紅茶でよかったかな?」
「はい…ありがとうございます。」
その時私はよっぽど不審そうな顔して女の人を見ていたんだろう。
「あ〜…彼女、俺の婚約者なんだ。」
「…婚約者……」
核心をついた言葉を言われた瞬間、目の前が真っ暗になった…
「えっと、俺の受け持ちの生徒の夏木、って何回か話したことあったろ?」
「あ〜!あのすごく熱心な!はじめまして!朝井美咲と言います。伸明、よくあ
なたのこと話してるのよ。」
なんか、すごく感じのいい人。
先生ともお似合いで、…何やってんだろ私。
「あ、あの私やっぱり帰ります。…バレンタインデーなんかに来てお邪魔ですよ
ね!ごめんなさい!」
「え?だってこんな時間に来るなんてよっぽどのことがあったんだろ?」
「そうよ。私たちのことなんて気にしないでいいのよ?」
「いえ!大丈夫です!ちょうど塾帰りだったし…また明日職員室行きます!それ
じゃあ、失礼します!」
先生が引き留めようとする声も無視して部屋を飛び出し、全速力で走った。
夜風が目に染みて、涙が出てきた。
「はあ、はあ…?」
目の前にゆっくりと近付いてくる影を見つけた。
息を整えながら、私もゆっくり近付く。