「prelude」-7
「あ、家ここです。」
「おぉ、そっか。じゃあ気を付けて…」
「はい。ありがとうございました…」
おじぎをすると、先生はゆらゆらと手を振って、私が家に入るのを見届けてくれ
た。
なんか、夢みたい…
それから、私は毎日、無理矢理に質問事項を作っては町田先生の所へ行った。
何を聞こうかバカみたいに必死で、やっとの思いで考えたちっぽけなことでも、
先生は真剣に答えてくれた。時には本を貸してくれることもあったくらい。
先生とのやりとりの中で、先生はほんとに歴史が好きなんだなぁって感じた。
一番好きな新選組の話するときなんて子どもみたいで、心が暖かくなる気がして
、私の気持ちはどんどん深まるばかりだった。
つまらないモノクロの日常で、先生と過ごす時間だけがカラフルだった。
年を越して、新しい年にもすっかり馴染んだ2月。
一般の筆記試験しか受けない私の入試本番まで、あと1週間…
だけど、この日ばかりは勉強時間を少し削って、また別の勝負に挑む…
バレンタインデーだ。
町田先生は毎年かなりの数のチョコを貰ってるらしい。
去年と一昨年は勇気がなくて、私は渡すことができなかったけど…でも今年は少
しだけ先生に近付くことができたって思ってるし、何より私は3月で卒業なのだ
…
このままさよならなんて、やっぱり嫌だ…